私たちは文殊さん、文殊菩薩と言い習わします。
実はもう少しきちんとした呼び名があって、文殊師利菩薩(もんじゅしりぼさつ)と言います。あまり聞き慣れない名前ですが、安倍文殊院の境内にも ”師利” 付きの名前が案内されていました。
文殊師利菩薩。
香炉台の横に、はっきりと書かれていますね。
文殊師利菩薩とは、サンスクリット語のマンジュシュリーの音写です。マンジュシュリーの意味は、「麗しい輝きを持つ者」なんだそうです。文殊師利、この機会に是非覚えておきたいですね。
右手に降魔の利剣、左手には蓮華を持つ渡海文殊
智恵の力で人々を導くという文殊さん。
獅子の背中に乗るスタイルはよく知られていますが、両手に何を持っているのか今一度確認しておきましょう。
日本三文殊第一霊場の安倍文殊院。
この本堂内に、文殊菩薩騎獅像を中心とする5体の渡海文殊が祀られています。鎌倉時代の作で、大仏師・快慶の造立と伝わります。文殊さん向かって右横に立つ、飄々とした格好の善財童子が人気ですよね。
右手に利剣、左手に蓮華のスタイルです。
左手には巻物を持つ文殊さんが多いのですが、安倍文殊院では蓮華ですね。そういえば、般若寺の文殊菩薩騎獅像も右手に利剣、左手に蓮華のスタイルです。
蟇股の意匠は獅子でしょうか。
安倍の文殊さんらしいデザインですね。
安倍文殊院では文殊菩薩が主役ですが、釈迦三尊の形式で祀られる際は、お釈迦様の脇侍として仕える格好になります。真ん中に釈尊、向かって左に文殊菩薩、向かって右には普賢菩薩が居並びます。
子供たちの書初めでしょうか。
本堂前の礼堂に掲げられていました。
こちらはお馴染みのジャンボ干支花絵。
来年の干支の「猪」がパンジーで描かれています。
文殊池に浮かぶ金閣浮御堂。
ここは安倍氏の氏寺と仰がれ、金閣浮御堂の別名を「仲麻呂堂」と称します。遣唐使として大陸に渡り、異国の地で最期を遂げた阿倍仲麻呂を遠く偲びます。
安倍文殊院本堂。
巨大な文殊師利菩薩を安置するお堂です。
安倍文殊院の境内には、特別史跡に指定される文殊院西古墳があります。
精緻な切石加工の横穴式石室が開口しており、誰でも自由に出入りができます。古墳好きと仏像好きを同時に満足させてくれるお寺ですね。
もんじゅしりぼさつ、また新たな仏教用語を学ぶ機会となりました。