「厨(くりや)」という言葉に反応してしまいました。
厨神社と言うからには、料理人や台所に関係する神様が祀られているのでしょう。
史跡尼寺廃寺跡を後にし、『飛鳥・白鳳の道』を南へ辿ります。その途中で西へ上がって行く道がありました。迷わず道を逸れて坂道を登ると、右手に「薬師堂の役行者像」が姿を現します。そこからさらに登って行くと、行く手に鳥居が見えて参りました。
尼寺厨(にんじくりや)神社の鳥居。
向こうに見えているのは拝殿です。
御祭神は御饌津大神(みけつおおかみ)。食物を司る神で、御食津神(みけつのかみ)とも呼ばれています。
アマテラスの御饌を調える神&天満神社の絵馬堂
厨(くりや)とは、文字通りキッチンのことです。
食物を調理する所を意味し、厨(くりや)は黒屋から来ているとも言われます。
尼寺厨神社に祀られる神様は、最高峰の神である天照大神の食を司った神とされます。アマテラスの料理番ともなれば、その神格の高さがうかがえますね。
拝殿内の絵馬。
拝殿の奥には本殿が垣間見えます。
鳥居の手前には石段が付いていました。
ミケツカミと言えば、大神神社の参道右手(御炊社)にも祀られている神様ですね。
広義には保食神(うけもちのかみ)、豊受姫、宇迦御魂などもミケツカミの範疇に入るのではないでしょうか。
尼寺厨神社の案内板。
一・祭神 御饌都大神
伊勢神宮の外宮の祭神天照大御神の御饌を調える神であるから、大変位の高い神であると共にこの尼寺地方には豊かな農産物があったことがうかがえる。
一・社殿
一間社流造り銅板葺きである。
一・例祭日
3月25日、7月21日 10月17日は尼寺の人々により挙行されるも巫女の神楽奉納などがある。
一・境内摂社
菅原道真を祀る天満宮がある。
拝殿前には狛犬が陣取ります。
紅白の布を掛けていますね。赤い涎掛けはよく見かけますが、白いのは珍しいです。
向かって右側、阿形の狛犬。
伊勢神宮では、朝夕の供膳を調進する建物のことを御饌殿(みけどの)と言います。古来より「御食(みけ)」という言葉の響きには、神々しさが漂います。
菅原道真を祀る天満神社。
拝殿向かって右手前に祀られていました。
天満神社は尼寺厨神社の摂社に当たります。鳥居から石段を上がった所に絵馬堂、その奥に本殿と続きます。
天満神社の絵馬堂。
どうやら堂内に入れるようです。
尼寺厨神社は、王寺町鎮座の火幡(ほばた)神社の境外摂社とも言われています。火幡神社は絵馬殿が有名ですが、厨神社の境内にも数多くの絵馬が掲げられています。おそらくこの辺りには絵馬を奉納する習慣が根付いているのでしょう。
絵馬堂の絵馬。
子供が生まれると、神社の氏子になった印に絵馬を奉納するようです。
男の子なら宇治川先陣、女の子なら尉と姥と相場が決まっています。
京都宇治川での合戦の模様を描いた絵馬は、その勇猛果敢な先陣争いに因んで男の子の逞しい成長を願います。一方の『尉(じょう)と姥(うば)』には、松の木の下に仲睦まじい老夫婦が描かれています。女の子の穏やかな成長を願う絵馬なのでしょう。
ここ尼寺厨神社は、格式高い料理番を御祭神としています。
推測の域は出ませんが、世の料理人の信奉も篤いのではないでしょうか。