平家ゆかりの家紋と言われる「向かい蝶」。
モハメドアリの ”蝶のように舞い、蜂のように刺す” の例え通り、その姿は流れるように優美です。蝶のたおやかなストリームラインは、昔の人にとっても神秘的に映ったことでしょう。
向かい蝶を描いた引出物の財布。
蝶が向き合う姿は、仲睦まじい ”夫婦のこれから” にも通じています。
二つの触覚がくるっと丸まり、全体的に丸みを帯びたデザインですね。お互いを感じ合いながら、適度な間隔を置いています。
成長をイメージさせる蛹からの脱皮
蝶の生態を見ていると分かりますが、成虫への過程で見事に脱皮します。
蛹(さなぎ)からの脱皮は、誰もが驚く大どんでん返しではないでしょうか(笑) なぜにまた、こんなに綺麗な紋様の蝶が出てくるのか!神のみぞ知る領域なのでしょうが、ミステリアスな蝶をさらに助長させるシーンでもあります。
徳川時代には、蝶を家紋とする大名も多くいたようです。
およそ300家が蝶紋だったと言いますから、かなりの人気を博していたことが分かります。
向かい蝶の他にも、浮線蝶という大変有名な紋があります。
左右対称の蝶が羽を広げ、これまた左右対称に丸まった触覚を円形に包み込むようなデザインです。浮線蝶を基本形にして様々な紋が派生しており、浮線橘・浮線鷹の羽・浮線蔦等々があります。興味深いのは蝶とは全く関係のない橘や鷹の羽にも、浮線蝶と同じように触覚のデザインが施されている点です。
それだけ蝶の姿に似せたかったのでしょう。何よりデザイン性に優れています。平たく言えば、野暮ったくないということでしょうか。
向かい蝶は縁起物にもよく似合いますね!