おふさ観音のバラを見て参りました。
5月半ばからの開花予報が出ており、まだ見頃には程遠い状態でした。開花状況こそイマイチではありましたが、境内を散策していると新たな発見もありました。ここにご報告しておきます。
水子地蔵と開花する薔薇。
蕾の状態のバラが多い中、幾つかの薔薇は既に開花していました。
おふさ観音のあるこの辺りは、かつて鯉ヶ淵という大池でした。慶安3年(1650)のある日、”おふさ” という名の娘が歩いていると、池から白い亀に乗った観音が現れたと伝えられます。感動したおふさは池に小さなお堂を建て、それが今の観音寺(小房観音)に発展していったそうです。おふさ観音の歴史に ”おふさ” 有り、なのですね。
縁結びの愛染明王を祀る西諸尊堂
バラまつりの開催期間は、毎年5月15日~6月30日までと決められています。
初夏の薔薇祭りほど知られていませんが、実は秋にも開催されています。10月後半から11月いっぱいまで、境内のイングリッシュローズを中心とした約3,800種類(およそ4,000株)もの薔薇を楽しむことができます。品種の多さはおふさ観音ならでは!薔薇好きにはたまらないイベント期間となっています。
おふさ観音本堂と薔薇の蕾。
生き人形などの寺宝特別公開には拝観料300円が必要ですが、境内は自由に出入りすることができます。つまり、薔薇の観賞自体は無料なのです。
おトイレ前の手水処。
粋な演出ですね、バラの花が浮かべられていました。
西諸尊堂に祀られる愛染明王尊。
縁結びにご利益のある仏様ですね。
おふさ観音の本堂手前には西諸尊堂と東諸尊堂があり、様々な仏像が安置されています。どれも小さな仏像ですが、間近で手を合わせることができます。
おふさ観音の愛染明王。
光背の火焔がいかにも愛染明王らしく、メラメラと燃えています。
神社仏閣めぐりの大きな目的の一つに、心に秘めた縁結びがあるのではないでしょうか。少子化、晩婚化の時代です。もはやどこの寺社も、縁結びと無縁ではいられません。
西諸尊堂前の薔薇。
よく見てみると、薔薇の葉っぱにも棘のような突起が確認できます。
薔薇と茨(いばら)は語源的にも通じているようですが、そのとげとげしさがまた魅力の一つでもあります。美しいものには棘があるとよく言いますが、まさしくその通りですね。
愛染明王の隣りには弁財天が祀られていました。
「融通弁財尊天」と書かれていますね。芸能や財運の神様として知られます。
観音開きの厨子の中に納まっていらっしゃいました。
おふさ観音といえば、大和十三仏霊場めぐりに名を連ねる観音菩薩が有名ですが、こうした脇役にも目を配っておきたいところです。
大和ぼけ封じ霊場のおふさ観音
おふさ観音はボケ封じ霊場としても知られます。
大和長寿道でつながる安倍文殊院と並び、ぼけ封じにご利益のあるお寺とされます。ぼけ封じ祈祷も行われており、安倍文殊院と合わせて5,000円の祈祷料となっています。
おふさ観音の山門。
大和長寿道に面して建つ山門はさほど大きなものではありません。道幅も狭く、車が対向するのもやっとでしょう。
駐車場案内と大和長寿道の看板。
門前の南駐車場奥に掲げられていました。
ここはバラまつり期間中には、大和ばら園さんによるバラの市(バラ苗の即売会)が開かれる場所です。「歩けば元気でボケ知らず」のキャッチフレーズが躍ります。安倍文殊院からおふさ観音までは徒歩4㎞、所要時間は1時間のようです。
本堂横の垣根に咲く薔薇。
ぼけ除け霊場に因んでか、安倍文殊院には木瓜(ぼけ)の花が咲きます。なぜか小房観音では木瓜の花を見ることができないのですが、やはりそこは薔薇に特化しておられるためでしょうか。
本堂前の錫杖。
風鈴まつりの際には、この辺りに様々な風鈴が吊るされていたのを思い出します。初夏のバラまつりが終われば、すぐまた翌日から風鈴まつりが開催されます。間髪入れずに二大イベントが連続して開催されるのです。その過渡期はお寺さんも大忙しなのではないでしょうか。
奈良県内の薔薇の名所に「霊山寺」があります。
桜井市在住の私からしてみれば、少し距離的に遠いこともあってか足が遠退いています。その点、おふさ観音は車で10分余りの距離です。すぐ近くには藤原宮跡もあり、歴史散策のついでに立ち寄れるお気に入りの場所となっています。
円空庭&現代アート展が開かれる茶房おふさ
おふさ観音にお参りしたなら、本堂裏手の喫茶スペースにも足を運んでみましょう。
おふさ観音の奥之院とでも言ったらいいでしょうか、また違ったおふさ観音の魅力に触れることができます。おふさ観音は芸術家の創作活動を支援しており、タイミングが合えばアート展を鑑賞することができます。
こちらは本堂前の不動明王。
割と大きな石像が木の陰に隠れるように立っていました。
子安観音と三宝荒神堂。
本堂裏手へと通じる道は、三宝荒神堂の前を北へ向かいます。
本堂裏に出ました。
ここにもたくさんの薔薇が栽培されています。
本堂横の大師堂から大銀杏へ抜ける通路沿いにも多品種の薔薇が植えられ、まさしく「花まんだら」の世界が広がっています。満開の時期に訪れたなら、それはそれは素晴らしいことでしょう。
円空庭と喫茶『茶房おふさ』が案内されています。
亀の池の横を通って鯉の池へ抜けると、そこには緑豊かな円空庭が広がっていました。
円空庭に水をたたえる鯉の池。
向こうに見えている建物が茶房おふさです。
残念ながら休業日でした。
茶房内のレトロなおトイレですが、今は使用禁止になっているようですね。古き良き日本のおトイレで、厠(かわや)と呼ぶにふさわしい雰囲気たっぷりの便所です。おふさ観音のシンボルである亀がコックリと頭を下げていますね(笑)
名物のバラジュースを飲みたかったのですが、この日はお預けです。
本堂を背景にバラを撮影。
見頃を迎えれば、たくさんのカメラマンで賑わう場所ですね。
高野山真言宗別格本山昇格記念の社号標
おふさ観音は高野山真言宗別格本山のお寺です。
普段はお寺の宗派など気にも留めないのですが、門前の社号標を見れば、そのお寺の歴史を垣間見ることができます。
山門右手に社号標が建っていました。
寺紋と共に、別格本山の文字が刻まれています。昇格記念の社号標は比較的新しいようですが、その右手の石標には歴史を感じますね。「くわんぜおん」の文字が読み取れます。おふさ観音の御本尊である十一面観世音菩薩のことだと思われます。
梵字の下に「積十一面観世音菩薩」と刻まれています。
この場合の「積」って、一体何を意味するのでしょうか。ご存知の方がいらっしゃれば、是非教えて頂きたいと思います。
鐘楼堂と薔薇。
山門入ってすぐ左手に鐘が吊るされています。この鐘が撞かれることはあるのでしょうか、まだ一度もおふさ観音の鐘の音は聞いたことがありません。機会があれば、是非聞いてみたいものですね。
鉢植えの中にもたくさんの薔薇が栽培されています。
開花の時を待ち続ける薔薇・・・今はただ、時が止まったように静かです。
亀の池。
おふさ観音の伝説に登場する亀は白亀だったと云います。
実際に白い亀が居るのかどうか分かりませんが、”白い” というだけでどこかミステリアスな空気を纏います。奈良公園の鹿にも、”白い鹿” が突然変異によって生まれることがあります。神様のイタズラと言えばそれまでですが、白鹿や白亀には持って生まれた神性が宿ります。
う~ん、どれも白くありませんね(笑)
甲羅干しをする亀を見ながら、おふさ観音の伝説と重ね合わせます。
初夏はハイキングの季節でもあります。
山の辺の道や多武峯街道を歩いている人たちをよく見かけますが、大和長寿道もウォーキングコースとしておすすめしたいと思います。ルート上には、みずし観音や藤原宮跡などもあります。
歩くことは健康につながります。
ボケ防止のために軽い運動は欠かせません。大和屈指のボケ除け霊場を散策路でつなぐ試みは仏様のご加護の元、成功しているものと思われます。
華やかなバラを見て、心も体もリフレッシュ!