春日大社の御間道(おあいみち)に、さぐり石という不思議な石があります。
春日大社本殿から若宮へと続く道の真ん中に、ミステリアスな石が埋まっているのです。うん?これは何・・・と、一瞬立ち止まって凝視します。そのほとんどが地中に埋まっているのでしょうか、見えている部分は氷山の一角のような気がします。
布生橋(ふしょうばし)の手前に埋もれる ”さぐり石” 。
石の表面は信仰の証しなのか、見るからにツルツルです。京都知恩院の瓜生石などもそうなのですが、表面だけちょこっと顔を覗かせていると底知れぬパワーを感じます。
額塚からさぐり石までの願い事
実はこのさぐり石にはご利益があります。
春日大社南門前の額塚(がくづか)からさぐり石までの距離を、目を閉じて歩ければ願い事が叶うと言い伝えられています。額塚って?何のことかとお思いの方もいらっしゃるでしょう。額塚というのは、南門前にある磐座のことです。
かつて春日大社の南門には「鹿嶋大明神」の神額が掲げられていました。落雷によりその額が砕け落ち、今の額塚がある場所に大きな穴が開いたそうです。その穴に額を埋納し、さらに穴を塞ぐために大きな石を被せたそうです。その被せた石の一片が今も磐座として祀られています。
こちらは祓戸社前の祓戸型燈籠。
春日大社には日本一の数を誇る燈籠が建っています。その中でも意匠を凝らした春日七燈籠は一見の価値があります。この祓戸型燈籠も春日七燈籠に名を連ねる名燈籠として知られます。
真上からさぐり石を撮影。
涙型と言ったらいいのでしょうか、いかにもご利益のありそうな形状です。
春日大社南門。
南門前に木の玉垣が見えていますが、あれが額塚です。額塚からさぐり石までの距離はほんの少しです。でも、やっぱり目を閉じたままでは難しいかもしれません(笑) 春日若宮おん祭の「遷幸の儀」は暗闇の中で行われると言います。ルートから推測するに、さぐり石の上も通過するものと思われます。足元で何かを感じながらの御遷座なのでしょうか。
布生橋を過ぎ、その向こうには細殿が見えています。布生橋を渡ったすぐの所に敷石が見られますね。伏鹿手水所の脇に剣先道がありますが、それとよく似た意味合いなのでしょうか。でも、先が尖っていない分、剣先道とはまた趣が異なります。若宮様へ向けてより柔らかな印象を受けます。
若宮神社、拝舎(はいのや)、細殿。
御間道を辿って若宮神社にお詣りします。
さぐり石から布生橋、そして細殿へと続く御間道。
古来より数多の参詣者が行き来した道です。
祈りの籠ったルート上に、秘かにその姿を留め続けます。
春日大社参拝の際は、是非この ”さぐり石” を探り当ててみましょう!