春日大社の南門前に赤童子出現石という磐座があります。
春日若宮御祭神の影向を匂わせる磐座には、独特の存在感が漂います。赤童子出現石を拝んだ後、若宮神社を通って福の神十五社巡りに出かけます。金龍神社を参拝して奥の院道を辿るとすぐに、春日明神遥拝所が現れます。
春日明神遥拝所の居石(すえいし)。
9個の石が縦3列、横3列に並んでいます。
明恵上人が春日大社本殿を遥拝した所
春日明神遥拝所は、華厳宗中興の祖の明恵上人が春日大社本殿を遥拝した所とされます。
明恵上人は鎌倉時代前期の僧で、和歌にも造詣が深かった人物として知られます。ひらめきの神とされる春日明神遥拝所は、十五社巡第九番納札社に当たります。
この辺りまで来ると、春日大社本殿周辺とはまた違った空気を肌で感じます。
世界遺産の春日山原始林に抱かれた神域は、さすがに忙しい毎日を忘れさせてくれるに十分です。ただただそこに居るだけで癒される。霊的に何かを感じるわけではありませんが、その包み込むようなヒーリングパワーにこの身を委ねます。
紀伊神社へ通じる奥の院道。
摂社若宮神社より南東奥、紀伊神社に通じる。
と案内されていますね。
9個の居石にズームインします。
左側の石には苔が生していますね。「結ぶ」という日本語の由来にもなっている ”苔生した状態” を目の前にします。ひらめきの神である春日明神遥拝所には、何かを生み出すパワーが感じられます。
それにしても、なぜ9つなのでしょうか?
その数字にも意味が込められているのかもしれません。無限大の8を超えて、0に返るまでの間にある9という数字。
奈良町の身代わり猿は、「苦が去る」に掛けて9つぶら下がっていたのを思い出します。明恵上人はこの場所から、何を思って遥拝されていたのでしょうか。
居石(すえいし)の文字が見えます。
9個の磐座が並ぶ第九番納札社。ゼロに帰する一歩手前の所で、心を込めて祈願する。その意味は小さくはないような気が致します。