春日大社に鎮座する受験合格・和歌の神様。
林檎の庭の北西にそびえる大杉。その袂に鮮やかな朱色の祠があります。大杉の陰に隠れて普段の参拝では目にすることのない神社ですが、御仮殿特別参拝のこの日はお参りする幸運に恵まれました。
社頭の大杉の傍らに鎮まる岩本神社。
かつては「住吉社」と称されていたそうです。
高さ23メートルを誇る大杉は樹齢1,000年の巨木です。鎌倉時代の春日権現験記には幼木の姿で描かれていたと言いますから、その歴史の深さに感じ入ります。
住吉三神を御祭神とする岩本神社
岩本神社は住吉三神をお祀りしています。
表筒男命(うわづつのみこと)、中筒男命(なかづつのみこと)、底筒男命(そこづつのみこと)の三柱を仰ぎ、受験合格や和歌の神様として信奉を集めています。
写真左から直会殿、大杉、岩本神社、御仮殿(移殿)が並びます。
古来より住吉明神には海神信仰や歌神信仰が見られます。住吉大社といえば、航海の神様というイメージがありますが、知る人ぞ知る和歌の神様でもあります。
岩本神社の案内板。
例祭は12月16日に執り行われているようですね。
御神徳に「住吉明神様をお祀りした受験合格・和歌の神様」と記されています。春日大社には勝守のお守りもあり、かねてから合格祈願の神社としても知られていたようです。
奈良県内で合格祈願にご利益のある寺社といえば、奈良市菅原町(すがはらちょう)にある菅原天満宮や、安倍晴明を祀る桜井市の安倍文殊院などが挙げられます。春日大社の中でも特に、受験生にとってこの岩本神社にお参りする意味はありそうですね。
直会殿の屋根を突き抜けるイブキ
岩本神社に手を合わせ、ふと右側に目をやると屋根を突き抜けて伸びる木が目に飛び込んできました。
これはスゴイ!
大杉の根元から斜めに伸びているイブキ(ビャクシン)の神々しい姿は、自然を崇拝する春日大社の信仰を忠実に体現しています。
大杉の根元。
巨樹の根元には言い知れぬパワーが満ち溢れています。
春日大社の参道沿いにも、隆々と盛り上がる木の根っこを見ることができますが、御本殿間近の大杉の根元にはやはり格別なものを感じます。
春日大社の神さぶるイブキ!
見事に直会殿の屋根を突き抜けていますね。
春日大社の小冊子に目をやると、外国人観光客向けに英語案内も出ています。そこには our strong faith in the veneration of nature と記されています。veneration とは深い尊敬や崇拝を意味する名詞で、分かりやすく言えばリスペクトに近い意味合いがあります。しかしながら、リスペクトよりもさらに神聖で侵すべからざるものに対する崇拝を意味する言葉とされます。
春日大社の自然崇拝を目の当たりにする瞬間ですね。
間違ってもこの木は切ることができません。
さらに英和辞典を読み進めると、形容詞の venerable の欄に「古くて神々しい、神さびた、いわれのある」という一行がありました。a venerable shrine で謂れのある神社、a venerable cedar で杉の古木と翻訳されます。外国人観光客が増加の一途を辿る昨今ですが、海外からのお客様を案内する際に是非覚えておきたい単語の一つだと思われます。
春日大社の御廊の前に杉の大木が聳えています。
中門前の通路から林檎の庭にかけて、緩やかな傾斜の芝生が敷かれています。普段は幣殿の南側からお参りするだけなのですが、中に入ってみると色々な発見があって面白いですよね。
大杉と岩本神社に近寄ります。
現在、御仮殿には春日大社本殿の四神がお遷りになられています。御仮殿の入口には注連縄が張られ、そこに紙垂が下がっているのが見えますね。
ローアングルから。
文字通り神様を仰ぎ見ます。
大杉の目通り周囲は7.94mにも達するそうです。
岩本神社がこの場所に祀られているのも何か意味があるのでしょうか。自然崇拝のイブキに御神木の大杉、そしてその傍らに鎮まる岩本神社。これから将来に渡って、幾多の試練や障害を乗り越えて行く受験生たち。彼らにとってイブキや大杉のパワーも感じられる岩本神社は、頼りがいのある神様と映ることでしょう。
春日大社祈祷所近くに祀られる総宮神社。
読み方は総宮(そうぐう)神社と読みます。景雲殿で催されていた獅子狛犬のイベント記念にクリアファイルを購入しました。総宮神社は八幡神、春日神、伊勢神等々、様々な神々を御祭神とする神社です。
総宮神社、一言主神社、水谷神社を通って若草山麓を抜け、東大寺守護の手向山八幡宮、二月堂、鐘楼ケ丘、大仏殿と続く帰路に着きました。
今回の参詣で春日大社にも合格祈願の神様が祀られていることが分かりました。年末年始から受験シーズンにかけて、多くの受験生たちがお参りになられることを祈念致します。