奈良公園バスターミナルで暇つぶしをしていると、鹿の鳴き声が案内されていました。
主に雄鹿の鳴き声ですが、どれも聞き覚えのある響きです。フィーヨー、ゲゲゲゲ、ミーフーン等々、ボタンを押すと鳴き声が再生される仕組みでした。

冬毛のオス鹿。
夏毛の鹿の子模様はどこへやら、すっかり焦げ茶色の冬仕様です。首周りの逆立つ毛は、発情期ならではの特徴です。奈良公園の鹿は、概ね9月から11月にかけて発情期を迎えるようです。年明け早々でしたが、まだ油断はならないようですね。

縄張りを主張するオス鹿!雄々しいたてがみがシンボル
オス鹿は自分の子供が分からないようです。
一方の小鹿も、自分の父親が分かりません。母子のつながりは強固ですが、父と子の絆は至って薄いと言います。生物学的観点からも、ごく自然なことなのかもしれませんね。鹿は一夫多妻制で、強い雄が幅を利かせるようです。発情期の雄は、縄張りを主張する際「フィーヨー!」と甲高い声で鳴く習性があります。

雄鹿に注意を促す案内板。
メス鹿の妊娠期間はおよそ7か月。逆算すると、まだ1月初旬はオスがメスを追い求めている時期と言えるでしょう。鹿苑で子鹿公開が行われるのは初夏ですよね。5月から6月にかけて出産シーズンですが、まだ7月頃までは出産するメスもいます。

案内板に目をやると、発情期は mating season と表現されていますね。雄鹿の様子を the male deer are feisty. と綴ります。辞書を紐解くと、feisty(ファイスティ)は怒りっぽい(形容詞)を意味し、小犬のことを feist と言うようです。

奈良公園バスターミナルの鳴き声ガイド。
オスがメスに近付く時、「ミーフーン」と鳴きます。右向こう、頭を突き合わせる二頭の鹿の威嚇音は「ゲゲゲゲ」・・・公園内を歩く際は、いつも以上に耳をそばだててみましょう。

発情期のオス鹿のたてがみが案内されていました。
mane(メイン)は名詞で「たてがみ」ですね。

獅子のたてがみのように、首回りが勇ましくなっています。

奈良県庁の屋上庭園。
若草山の右手には、御蓋山と春日山を望みます。
母性本能が強い雌鹿。可愛いバンビは、母鹿の帰りをじっと隠れて待つようです。観光客は絶対に子鹿に触れてはなりません。人の匂いが付いてしまうと、我が子と認識出来ずに育児放棄する可能性があります。
母子間で呼び合う際は、「チュイーン」と鳴きます。ひょっとすると、奈良公園内で一番よく耳にする鳴き声かもしれませんね。子を探し回る母、母を求め続ける子。
そんな子鹿もいつかは独り立ちし、繁殖活動に入ります。母鹿もまた、新たな繁殖に向けての準備期間に入ります。子鹿は一生の間、自分の父親を知ることはありません。その一方で、独り立ちした後でも母親のことは覚えているのでしょうか。どこかで出くわせば、懐かしさのあまりじゃれ合うなんてことがあるのでしょうか・・・気になりますね。
動物の世界ですから、そんな甘いものではないのかもしれません。過去も未来も無く、ただただ今を生きる野生動物たち。その一瞬一瞬を精一杯生きる中で、新たな繁殖に向けて切り替わっているのかもしれません。どこか寂しいようでいて、実はそれが自然なのかもしれません。


