催馬楽に唄われた飛鳥井

雅楽歌曲の一種である催馬楽(さいばら)をご存知でしょうか。

催馬楽とは要するに馬子唄のことですが、平安時代の歌集「催馬楽」に飛鳥坐神社の飛鳥井が唄われています。

飛鳥井

注連縄と紙垂で結界を張られた飛鳥井。

古来からの井戸水で、飛鳥坐神社の明神鳥居向かって右側に佇みます。

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催馬楽は馬子唄か前張か

民謡の一つである馬子唄(まごうた)。

「馬子にも衣裳」の諺で知られる馬子は、馬を曳いて人や荷物を運搬する仕事を請け負っていました。その馬子が、馬を曳きながら歌った歌を馬子唄と言います。息を長く引っ張るスタイルの歌で、旅客を慰める風情ある歌として受け継がれていました。

馬を曳いて長い道のりをひたすら歩くわけですから、つい単調になりがちです。そこで、調子を付けるために馬子唄が唄われていたわけですね。馬方唄(うまかたうた)、馬追唄(うまおいうた)、馬喰節(ばくろうぶし)などとも呼ばれます。

催馬楽の飛鳥井

催馬楽に唄われた飛鳥井。

「飛鳥井に宿りはすべし をけかけもよし 御水もよし 御秣もよし」

飛鳥井の水の清らかさが讃えられた名歌です。

催馬楽は平安時代初期に、庶民の間で歌われていた民謡や風俗歌の歌詞に、外来の楽器を伴奏楽器にして新しい旋律の掛け合いを生み出しました。雅楽における管弦の影響を受けた歌曲として知られます。

飛鳥井が題材にされた歌の最後の方に、御秣(みまくさ)という難しい言葉が見られます。御秣とは御馬草のことで、家畜の飼料にする植物を総称して言います。馬子唄らしく、馬の餌である道端の草が表現されているのでしょうか。ちなみにその前の「御水」は御水(みもひ)と発音します。この場合の「み」は接頭語で、「もひ」は水を盛る器、転じて水を表しています。つまり、この御水(みもひ)こそが飛鳥井を表しているのかもしれませんね。

「をけかけ」とは麻笥(をけ)を掛けておく何かを表しているのでしょうか。麻笥(をけ)はヒノキの薄板を曲げて作られた円形の器のことです。全体の歌の意味を解釈するに当たって、そのように理解するのが妥当なような気が致します。

香久山

水落遺跡の横の駐車場に車を停め、新鮮野菜が売られているお店で古代米とあすかルビーを購入します。

空き時間に余裕があったため、飛鳥坐神社まで足を運んでみることに致しました。駐車場を出て振り返ると、遥か向こう側に天香久山が見えています。

飛鳥の蝋梅

飛鳥坐神社の手前に蝋梅が咲いていました。

神社前は道も狭く、見通しも利きにくいためカーブミラーが設置されています。

飛鳥坐神社の明神鳥居

飛鳥坐神社の明神鳥居。

催馬楽の定義としては馬子唄の他にも、前張(さいばり)の転ではないかとする説もあります。

前張も雅楽歌曲の一種です。神楽の採物(とりもの)の歌の次、雑歌の前に唄われる歌のことを言います。果たして催馬楽は前張から派生した歌なのでしょうか、それともやはり馬子唄なのでしょうか。

飛鳥坐神社の蝋梅

鳥居をくぐった石段の手前にも蝋梅が開花していました。

催馬楽に詠まれた唄に触れながら、飛鳥井の前で一息ついている、そんな旅人の風景が蘇ってくるような気が致します。