双方中円墳の櫛山古墳

キャンディー型古墳と言われる櫛山古墳。

袋の両端を縛って包装されるキャンディー。ちょうどその形状を思わせる古墳が天理市柳本町にあります。崇神天皇陵(行燈山古墳)や景行天皇陵(渋谷向山古墳)などの大型前方後円墳が集まる柳本古墳群。この辺りは古墳探訪には欠かせない場所となっています。

櫛山古墳

櫛山古墳の航空写真。

前方部を西側に向けた前方後円墳です。しかしながら、よく見てみると後円部の東側に造り出しのような箇所が見られます。方形の造り出しを持つことから、双方中円墳とも呼ばれています。

崇神天皇陵周濠のすぐ東側に築かれた古墳で、龍王山より西に延びる尾根上に位置しています。

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発掘調査で見つかった後円部墳頂の竪穴式石室

円丘の両側に方形の突出部を持つ双方中円墳(そうほうちゅうえんふん)。

櫛山古墳の他にも、香川県高松市の猫塚古墳などが双方中円墳として知られます。特異な形をした古墳だけに、一度は見ておきたい古墳の一つだと思われます。

櫛山古墳

櫛山古墳の墳丘。

山の辺の道のルート上から撮影していますが、この位置からだと双方中円墳であることが確認できませんね。墳丘の周りには溜池がありますが、このため池は水田の灌漑利用で江戸時代に作られたもののようです。古墳築造時には空濠だったと推測されています。

池の畔には「てくてく天理ウォーキングフェスタ」の幟が立っていました。

史跡櫛山古墳

墳丘入口付近の案内板。

櫛山古墳は行燈山古墳のすぐ東側に立地する全長155mの古墳で、通常の前方後円墳に短い方形部(造り出し)を付加したような特異な形状から、双方中円墳とも呼ばれています。

昭和23(1948)年から奈良県教育委員会が実施した発掘調査では、後円部の墳頂から竪穴式石室と石棺の一部が見つかり、腕輪形石製品や合子・盤・壺形などの滑石製品、鉄製品などが出土したほか、東側の方形部頂上の平坦面では白礫を敷いた特殊な遺構が見つかりました。さらに、昭和63(1988)年に前方部北側で実施された発掘調査では、前方部を区画する掘割と外堤状の遺構が検出され、口縁を鋸歯状に整形した楕円筒埴輪がまとまって出土しました。

平成9(1997)年には天理市教育委員会が前方部南西側の池渡堤(現在地付近)の護岸工事に伴う発掘調査を行い、池内から前方部基底部の葺石と埴輪列を検出しました。また、墳丘基底部よりさらに下段にも墳丘を構成する斜面があることもわかっています。

これらの調査成果から、櫛山古墳の築造時期は古墳時代前期後半(4世紀末)とみられ、柳本古墳群の中では比較的新しい古墳と考えられています。なお、江戸時代には前方部が柳本藩の弓場になったといわれ、現状でも後円部へ登る斜面が大きく削られています。

なんと、柳本藩の弓場としても利用されていたようですね。

櫛山古墳は葺石と埴輪を持つ古墳として知られます。今回は墳丘に登る時間が無かったのですが、古墳を覆っていた葺石も見学することができるようです。是非次回はトライしてみようと思います。

山の辺の道

崇神天皇陵の脇を抜けて、櫛山古墳へと向かいます。

ここは山の辺の道~ ”奈良盆地周遊型ウォークルート” と案内されています。奈良盆地は英語で、Nara Basin と言うんですね。basin は洗面器やたらいを意味する名詞ですから、何となくイメージができます(笑)

櫛山古墳と池

右手に見える墳丘(前方部)が櫛山古墳です。

前方部の幅は70mで、三段築成の墳丘です。後円部中央には主軸を南北に向ける全長7.1m、幅1.4mの竪穴式石室があり、その周囲を楕円形埴輪が巡っていたようです。石室内には長持形石棺の蓋石と底石の一部が残っていたと言います。出土の際、石棺の下半分が石室の床面を掘って埋められていました。

伊射奈岐神社の近くに専行院というお寺があります。その専行院(柳本町)境内の石棺仏こそが、櫛山古墳出土の長持形石棺ではないかと言われています。

ウォーキングフェスティバルの旗

左側の池が櫛山古墳の周濠、道のすぐ右側には広大な崇神天皇陵が広がっています。

櫛山古墳の副葬品には管玉、車輪石、石釧、滑石製合子、鉄鏃などが挙げられますが、特に車輪石石釧が多かったそうです。造り出し部の平坦面では、白礫を大量に敷き詰めた施設が検出されており、何かの祭祀遺構ではないかと伝えられます。

櫛山古墳と行燈山古墳の分岐点

崇神天皇陵と櫛山古墳の分岐点。

左手へ下って行けば、崇神天皇陵にアクセスします。右手が櫛山古墳の方向です。

行燈山古墳と櫛山古墳

行燈山古墳(崇神天皇陵)と櫛山古墳の航空写真。

二つの古墳の位置関係がよく分かりますね。赤い色で現在地が示されています。

櫛山古墳の被葬者は、行燈山古墳とも関係のある有力人物なのでしょうか。

櫛山古墳

こちらが櫛山古墳の墳丘への入口です。

山の辺の道ハイキングの寄り道ルートとして面白いかもしれませんね。

人気観光スポットの長岳寺が近くにあることから、いつもなら素通りしてしまうところですが、ちょっと道草を食ってみるのもオススメです。これと言って観光のお目当てになるものがあるわけではありませんが、珍しい古墳の形状をした櫛山古墳です。ご自身の目で双方中円墳を体感してみるのもいいでしょう、またとない古代史探訪になるはずです。

<天理市の古墳関連情報>