最後のニホンオオカミが捕獲された東吉野村の鷲家口(わしかぐち)。
伊勢街道の宿場町のあった所で、天誅組の史跡としても知られます。日本に残しておきたかった“ラスト狼”ですが、現在はロンドン自然史博物館に保存されているようです。
東吉野村小川にあるニホンオオカミの像。
犬に比べてスマートな体形です。実物大のブロンズ像が、山に向かって遠吠えしていました。
高見川沿いのニホンオオカミ!細長い脚と大きな尾
ニホンオオカミを実際に見た人はいないでしょう。
もちろん、絶滅の可能性が限りなく大きいわけですから当然のことです。
そんな私たちでも、ニホンオオカミの姿を想像することは出来ます。その際、手助けとなるのが東吉野村のニホンオオカミ像です。一見してスマートな体形に驚きます。肩幅も異様に狭く、大きな尾っぽをしています。獲物を執拗に追いかける“持久戦”に適した体格と言えるでしょう。
ニホンオオカミの足。
つま先立ちで爪の数は4本ですね。かかと近くに狼爪(ろうそう)のようなものも見られます。
よくオオカミの足跡は、真っ直ぐに付くと言います。後脚が前脚の足跡の上に重なるのです。スムーズな足の運びで無理なく獲物を追いかけます。おそらくニホンオオカミにも、そのような特徴があるのでしょう。
東吉野村役場。
高見川越しに役場の背後を望みます。
ニホンオオカミ像の場所ですが、県道16号(吉野東吉野線)沿いです。役場の対岸に渡り、中黒・国栖・宮滝方面へ向かいます。ニホンオオカミ像には専用駐車場がありました。車数台分のスペースですが、無料駐車が可能です。
あっ、行く手に見えてきましたね!
今回、私は役場から徒歩で向かいました。道路左手の高見川沿いに看板が立っています。右手前には祠が祀られていました。この祠も狼と何か関係があるのでしょうか。
遠吠えする狼。
右向こうに細長い駐車場が完備されていますね。
壇上に建つニホンオオカミ像。
それ以外は何もありません。
普通の犬に比べ、細長い脚をしていますね。
耳も小さいです。
吠えるニホンオオカミ!
獲物に食らいついたら離さないであろう牙!ブロンズ像では分かりませんが、夏と冬では体毛の色も変化したようです。いわゆるカムフラージュの保護色でしょうね。
像の周りを一周することが出来ます。
対岸の山を背景に・・・このシルエットもいいですね。
狼は主に寒い地域に棲息します。奈良県東吉野村も、冬場は路面が凍結するエリアです。間違いなく私が住む桜井市よりも冷え込みは厳しいでしょう。
ブロンズ像の製作者の名前を刻みます。
大きな尾っぽ。
無駄な肉を削ぎ落したニホンオオカミ。
前脚よりも後脚の方が長いでしょうか。
骨格までよく再現されています。
大きい牙は上下2本ずつですね。
東吉野村のマスコットキャラクターは「ひよしちゃん」で、狼の格好をしています。かわいらしい姿で、ニホンオオカミのように鋭くはありません(笑)好きな食べ物は「ひよし味噌」やよもぎ餅で、趣味は鮎釣り、秘湯巡りなんだそうです。こういうキャラ付けをペルソナと言うんでしょうが、各自治体の工夫が感じられて興味深いです。
股の下をちょっと失礼。
やはり若雄ですね。
狼爪(ろうそう)でしょうか。
掌は割と広めです。
雪深い地でも、かんじきのように沈み込まないのでしょう。
ニホンオオカミ像の解説。
ニホンオオカミは、明治の初めまで本州・四国などにかなりの数が生息していたようですが、その後急減し、明治38年(1905)東吉野村で捕らえられた若雄のニホンオオカミが日本で最後の捕獲の記録となりました。
当時ここ鷲家口の宿屋芳月楼で地元の漁師から、英国より派遣された東亜動物学探検隊員米人マルコム・アンダーソンに8円50銭で買い取られ、大英博物館の標本となっています。
この標本には、採集地ニホン・ホンド・ワシカグチと記録され、動物学上の貴重な資料となっています。
かつて台高の山野を咆哮したニホンオオカミの雄姿を、奈良教育大学教授の久保田忠和氏の手により、等身大のブロンズ像として再現しました。
緑と水のふるさと・東吉野村の自然愛護を願うシンボルとしていきたいものです。
昭和62年(1987) 東吉野村
ニホンオオカミ像の駐車場。
その上手に「天皇陛下行幸跡」と刻む石碑が見えます。
天皇陛下行幸跡の標。
昭和28年11月18日に、当時の天皇である昭和天皇が旧小川村の植林状況を視察されたようです。行幸を記念する石碑ですね。
杉の木でしょうか。
真っ直ぐに林立する姿は、どこか清々しくもあります。
石碑からニホンオオカミの像を見下ろします。
狼ってやはり神秘的ですよね。
埼玉県秩父市の三峯神社には狼が祀られ、スピリチュアルな雰囲気漂う三ツ鳥居が建っています。三ツ鳥居と言えば、大和国一之宮・大神神社です。大神神社(おおみわじんじゃ)と呼びますが、見方によっては「大神(おおかみ;狼)」とも取れます。絶滅したであろうニホンオオカミに、人知の及ばない“物々しさ”を感じます。
狼は亡び 木霊ハ存ふる (オオカミはほろび、こだまはながらふる)
俳人であり、大阪芸術大学教授の三村純也氏の句碑が建っています。
ここからさらに山奥へ足を延ばし、大又手前辺りまで行くと、ニホンオオカミの幻影を詠う歌碑があります。三橋敏雄氏の俳句で、“絶滅の かの狼を 連れ歩く”と詠います。
清流の音が響き渡っていました。
令和の時代になっても、大自然を感じさせるエリアです。
県道16号をさらに吉野方面へ進みます。
高見川に御幸橋(みゆきばし)が架かっています。橋を渡って折り返し、また役場に戻りました。是非皆さんも、最後のニホンオオカミに触れてみてはいかがでしょうか(^O^)