平城宮跡資料館に小さな供養塔が展示されていました。
「百万塔」と呼ばれるミニチュア三重塔で、世界最古の印刷物とされる木版印刷の陀羅尼経を納めます。奈良時代の天平宝字8年(764)、恵美押勝の乱後に称徳天皇が造らせたという百万塔。畿内の十大寺に納められ、法隆寺伝来のものが残ります。
称徳天皇発願の百万塔。
平城宮跡資料館の北方には称徳天皇の御陵があります。西を向く高野陵ですね。
手元供養で鎮護国家を願う!称徳天皇の妙案
十大寺に納めたという百万塔。
大安寺、元興寺、興福寺、薬師寺、東大寺、西大寺、法隆寺、弘福寺(川原寺)、四天王寺、崇福寺の十官寺を指し、そうそうたる寺院の名が並びます。百万塔を納める堂宇・小塔院も建立されるなど、かなりの力の入れようだったようです。
平城宮跡資料館。
平城宮跡の北西部にある資料館で、入館・観覧料は無料です。
百万塔の解説文。
天平宝字8年(764)9月に起きた恵美押勝の反乱を鎮めた称徳天皇は、この戦いで亡くなった人々を悼み、また国家の安泰を願って、百万基もの木製の三重小塔を作らせました。これが百万塔です。百万塔は完成後、奈良やその周辺の10のお寺に10万基ずつ分置されました。
百万塔は、塔身部と相輪部の2つの部材からなります。高さは21.5cm、轆轤を使って作られています。最上層の屋根の頂部を刳り抜いた空洞に、陀羅尼経と呼ばれるお経を収め、上から相輪部を差し込んで栓をしています。
陀羅尼経を丸め、百万塔の中に収納していたようです。
横軸轆轤の鉄爪の形が、産地や作者によって様々であったことが説明されています。
見上げる塔もいいですが、ミニチュアサイズも有難いですね。
「手元供養」という言葉が頭をよぎります。
心の拠り所として、より身近に置いておける供養塔です。念持仏(ねんじぶつ)にも同じことが言えますよね。鎮護国家を願った称徳天皇のグッドアイデアだと思います。