奈良一番桜と称される氷室神社の枝垂桜。
写真愛好家たちが奈良で一番最初に咲く桜を撮影する際、必ずと言っていいほどその背景に映り込むのが四脚門です。控柱(ひかえばしら)が四本ある門のことを四脚門と言うわけですが、氷室神社の四脚門は奈良県指定文化財としても知られます。
氷室神社の四脚門。
写真上に枝垂れるように映り込んでいるのが、奈良一番桜の枝ですね。
禁裏御所の遺構
氷室神社の四脚門は、禁裏御所の遺構とされます。
枝垂桜の背後に歴史を感じさせる表門・東西廊が構えています。塀などのつっかいに用いられる控柱は、またの名を「すけばしら」とも称します。安定感を感じさせる支柱に支えられ、その歴史の重みに耐えてきました。
四脚門をくぐると、正面に拝殿・舞殿が控えます。
古来雅楽の中心地であった奈良において、その楽人の拠点とされた氷室神社。氷室神社の神主も楽人が勤めていたと伝えられます。
現代もよく使われる「楽屋」という言葉は、日本の雅楽に端を発しています。公演の前の「打ち合わせ」なども、太鼓の打ち合わせから来ていると言われます。拝殿・舞殿の右手奥には、氷室神社末社の舞光社が祀られており、南都舞楽の楽祖である狛光高公が祀られています。
氷室神社四脚門の案内板。
以下に引用させて頂きます。
応永9年(1402)禁裏造営の際、旧御所の日華門(にっかもん)と御輿宿(みこしやどり)を当神社に寄付され、寛永18年(1641)の禁裏造営の時にも日華門の扉を下賜されました。
現在の四脚門の扉はこのときのものです。切妻造、本瓦葺の四脚門に翼廊が接続した禁裏御所の遺構です。
四脚門から伸びる翼廊が、また味があっていいですよね。
氷室神社の招魂社から四脚門の方向を望みます。
鳥居をくぐって参道を進むと、ほどなく左手に手水処があります。手水処のさらに左手、駐車場の近くに招魂社が静かに佇みます。
氷室神社のおみくじ。
四脚門の案内板にあった御輿宿(みこしやどり)とは何を意味するのでしょうか。気になったので調べてみたのですが、どうやら御輿宿とは神輿(みこし)を納める庫のことを意味しているようです。神社の御旅所などでよく見られる、お神輿の収納庫のことですね。
日華門とは平安京内裏の内郭、紫宸殿前の大庭の東側にある門のことを言います。日華(にっか)は太陽の美称であり、月華門に相対する門が日華門とされます。建礼門をはじめ、内裏には数多くの門が設けられていますが、紫宸殿前の左近桜のちょうど東側に控えている門が日華門に当たります。
氷室神社の賽銭箱。
外国人観光客も数多く参拝されるのでしょう、英語表記で offertory box と案内されています。
今年もまた、奈良県指定文化財の四脚門を背景に咲く枝垂桜が待ち遠しいですね。春の到来を告げる枝垂桜は、歴史の重みを感じさせる四脚門と共にあります。