奈良坂の夕日地蔵

かなり大きな地蔵石仏です。

像高は188cm、光背も含めた総高は2.4mにも及びます。ちょっとした威圧感すら感じさせるお地蔵さんですが、その表情は実に穏やかです。夕日地蔵の佇む場所は、北山十八間戸から般若寺へ向かう道中になります。

夕日地蔵

道沿いに祀られる夕日地蔵。

1509年に建立された石仏で、光背を背に西向きに立っています。夕日地蔵の名の通り、西日を浴びれば美しく映えるのではないでしょうか。

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おとがひのラインに注目!会津八一の短歌に詠われる夕日地蔵

夕日地蔵の脇に目をやると、歌人・会津八一の歌が案内されていました。

「奈良坂の 石の仏の おとがひに 小雨流るる 春は来にけり」

「おとがひ」は顎を表し、そこに雨が滴っているのでしょう。古語の世界では、よくしゃべる様を「おとがひ」と表現することもあります(笑) かの『膝栗毛』などには、”えらい おとがひな わろぢゃ” と記されています。喋る時には顎が動きますよね。つまり、「おとがひ」をそのまま形容動詞として使った一例ですね。

夕日地蔵

夕日地蔵の立札。

もちろん、この場所に立ち尽くす夕日地蔵は今も昔もダンマリを続けます。ただ静かにしとしとと、そこに雨が流れ続けているのです。

浄福寺からの眺望

夕日地蔵のすぐ近くには浄福寺があります。

その浄福寺の石段から北山十八間戸を見下ろします。

遥か彼方には東大寺大仏殿も望めます。

会津八一の短歌

会津八一の短歌。

ならざかの いしのほとけの おとがひに こさめながるる はるはきにけり

「おとがひ」とは顎(あご)を意味する古語です。

夕日地蔵の顎に小雨が流れ落ちる情景が目に浮かびます。春の到来を感じた歌のようですが、よく見てみると、夕日地蔵の顎のラインは丸顔ながらもくっきりと浮かび上がっています。

夕日地蔵

右手に錫杖、左手には宝珠を持っています。

典型的な地蔵菩薩のスタイルではないでしょうか。

光背のてっぺんには、蓮華座上の月輪を置きます。その中に阿弥陀如来の種子「キリーク」が刻み込まれています。民家の窓がすぐ横に迫っていて、庶民の暮らしに溶け込んでいる様子がうかがえます。

夕日地蔵

夕日地蔵の首には、悟りに至る修行の三段階を表す三道(さんどう)が刻まれます。

「おとがひ」の下の辺りですが、少し陰になっていますね。

古語辞典を紐解けば、「おとがひの雫(しづく)」という言葉も出てきます。その意味するところは、手近にあっても思うようにならないものの例えなんだそうです。錫杖と宝珠を手にし、両手の塞がった夕日地蔵です。顎を滴る雨も、流れるに任せるしかなかったのではないでしょうか。

般若寺駐車場と楼門

般若寺の国宝・楼門

夕日地蔵を右手に見ながら、しばらく奈良坂を上がって行けば般若寺楼門が見えて参ります。その手前には、般若寺の駐車場がありました。

般若寺参詣の際には、是非見ておきたいお地蔵さんですね。夕日地蔵の見学は無料です。