奈良市内有数の地蔵石仏。
近鉄尼ヶ辻駅から東へ5分ほど歩くと、第二阪奈道路の出入口付近に辿り着きます。交通量の多い道路脇に、鎌倉時代中期の地蔵石仏がお堂の中に収められていました。
尼ヶ辻地蔵石仏。
この日はお地蔵様の両手を拝観することは出来ませんでした。目の前のお地蔵さんは左手に宝珠、右手には錫杖を持たないスタイルのようです。地蔵菩薩と言えば錫杖が付き物ですが、錫杖を持たないお姿は古式の流れをくむ格好と言えます。
垂仁天皇陵の近く!花崗岩製の縁切り地蔵
面長で、わずかに微笑をたたえる地蔵石仏。
黒く重厚な色合いですが、石材は花崗岩のようです。加工のしやすい花崗岩は古墳の石室などにも使われています。こうして辻に立つお地蔵さんにも使われていたんですね。
尼ヶ辻地蔵石仏を収めるお堂。
露天に晒されるわけでもなく、手厚く祀られていました。
かつて尼寺に入る女人は、この地蔵菩薩の前で仏門との結縁を誓いました。覚悟を持って尼ヶ辻地蔵石仏に手を合わせ、俗世との縁を切ります。そんな過去を持ったお地蔵さんであることを知る人は少ないでしょう。
石仏の周辺地図。
垂仁天皇陵や唐招提寺が近くにあります。平城宮跡にも程近い場所ですので、市内観光のゴールデンルートから少し足を延ばせば辿り着けます。
近鉄尼ヶ辻駅。
駅の出入口に、喜光寺や菅原天満宮を案内する道標が建っています。
奈良市指定文化財の石造地蔵菩薩立像。
平成2年度に、市の文化財に指定されているようです。
像高167cm 花崗岩製
この像は左手に宝珠を持ち、右手に錫杖を持たない古式の姿の地蔵を厚肉に刻んでいる。光背に文永二乙丑八月日という刻銘があり、文永2年(1265)に造られたことが分かる。
市内には石造の地蔵菩薩像が多数あるが、本像は制作年が明らかで彫技も優れており、本市における鎌倉時代の代表的な石仏のひとつである。
垂仁天皇陵。
広大な周濠に囲まれた陵(みささぎ)です。
石仏からは目と鼻の先ですので、訪れた際は御陵参りも併せてどうぞお楽しみ下さい。