夏の涼を楽しむおふさ観音の風鈴まつり。
既に7月1日から開催されており、今年も乗り遅れまいと高野山真言宗別格本山の境内に足を運んで参りました。
小房観音境内に吊るされる せんとくんの風鈴。
手を合わせて風に揺られるせんとくんがとても印象的です。
毎年春秋に催されるバラまつりも圧巻ですが、7月から8月の二ヶ月間に渡って開催される風鈴まつりも大変人気があります。軒先に揺れる風鈴の音を聞いていると、夏の猛暑も和らぐというものです。おふさ観音の風鈴まつりでは、実に2,500を超える風鈴が境内に吊り下げられます。その数もさることながら、奈良風鈴、小田原風鈴、江戸風鈴、南部風鈴、琉球風鈴、別府風鈴、清水焼風鈴、瀬戸風鈴・常滑風鈴といった全国各地の様々な種類の風鈴を楽しむことができます。
風鈴祭り期間中の風鈴即売会
風鈴まつりが開催される7月1日から8月31日までの期間中毎日、日本各地の風鈴即売会が行われています。
風鈴即売会の場所は本堂前です。ちょうど水子地蔵の立つ辺りですね。
その種類の多さから、見ているだけでも十分に楽しめる企画です。
おふさ観音の山門。
高野山真言宗別格本山観音寺(おふさ観音)。
谷三山の門下生だった儒学者・前部重厚(まえべじゅうこう)の頌徳碑(しょうとくひ)が境内にあることでも知られます。
小房村に生まれた前部重厚は、その才能を認められ谷三山の高弟となりました。大阪府会議員や初代八木町長も勤めた人物です。造園学にも秀でており、明治27年奈良公園築造の際、知事の要請で作庭の指導にも当たっています。おふさ観音近くの「八木札の辻交流館」で谷三山の書を見学したことがありますが、改めてJR畝傍駅周辺には歴史の見所がたくさん詰まっていることに気付かされます。
風鈴即売会会場の江戸風鈴。
ガラス製の江戸風鈴は見るからに涼しげです。鉄製の南部風鈴や青銅製の小田原風鈴など、産地によってそれぞれ特徴がありますので、その違いを楽しみながら境内を散策して回ります。
こちらはフグの風鈴ですね。
丸く膨れるフグの特徴は、そっくりそのまま風鈴にも合っているのかもしれません(笑)
こちらは奈良風鈴ですね。
天井にも無数に風鈴が吊り下げられています。
本堂内では、「生き人形」特別公開が行われていました。
生き人形はおふさ観音所蔵の宝物で、風鈴まつり開催期間中毎日、拝観料300円で拝観することができます。
以下、風鈴まつりのチラシから引用させて頂きます。
幕末から明治にかけて作られ、かつて爆発的な人気を博した、まるで生きているかのような「生き人形」。近年、芸術品としての価値が再評価されています。その中でも特に天才人形師として名高く、「人形ハ、ヤスモトカメハチ」とまで言われた初代安本亀八作の「飯田喜八郎像」を特別公開いたします。亀八の作品で完全な姿が残っているものは、現在日本に数点のみで、その内のたいへん貴重な一点です。
安本亀八氏とは、いかにもおふさ観音に似つかわしいお名前ではないでしょうか。
おふさ観音の縁起には、亀にまつわる逸話が伝えられます。縁起物の亀に末広がりの八で、いかにも目出度い天才人形師ではありませんか。当日は時間に余裕がなく、生き人形拝観をスルーしてしまいましたが、次回のバラまつりの時にでも観てみようと思います。
なんだか重そうな(笑) 風鈴です。
こういう重厚な雰囲気の風鈴もあるんですね。見た目に反して、その音色は軽やかでした。
大和七福八宝霊場・大和十三仏霊場のおふさ観音
おふさ観音の本堂左手には恵比須天が祀られています。
商売繁盛の福宝をお授け下さる神様で、三輪山の麓に集う七福神の一つに数えられます。
鳥居額束に「恵比須天」、社号標には「恵比須尊天社」と記されています。
三輪山の麓に鎮まる大神神社を中心とする大和七福八宝霊場。つい先日訪れた久米寺は、長寿延命の福宝として寿老神が祀られています。仏典の「仁王教」には、七難即滅・七福即生とあり、七福神を篤く信仰すれば世の中の七つの大難をたちどころに消滅し、七つの福を生ずると書かれています。さらに大和最大の聖地である大神神社に参拝すれば、その七福がさらに倍増して八宝円満のご利益があると伝えられます。
恵比須天の尊像。
手にしているのは鯛を釣る竿でしょうか。背後には榊が供えられていました。
鯛を左脇に抱える恵比須天の風鈴。
大和七福八宝めぐりの小房観音ということで、ちゃんと ”えべっさんの風鈴” も用意されていました。
おふさ観音の絵馬。
本堂の裏手に千手観音様が祀られており、その横におふさ観音の由緒を物語る絵馬が掲げられていました。白い蓑亀の甲羅上に観音様がお立ちになり、その御前に草鞋を脱いで手を合わせる少女が描かれています。
昔、この地に鯉ヶ淵と呼ばれる池があったそうです。
そこを通りかかった土地の娘「おふさ」さん。白い亀の背に乗った観音様が霧の中に浮かんでいるではありませんか。観音様を見たおふささんは、この地に小さなお堂を建てて観音様を奉ったと伝えられます。歴史あるおふさ観音の起源が、掲げられた絵馬の中に凝縮して描かれているのが分かります。
江戸風鈴の向こう側に本堂裏手を望みます。
境内のあちこちで、カメラを手にする参拝客の姿が見られます。
本堂裏手に祀られる千手観音様。
全国でも珍しい北向きの観音様として知られます。「ひとこと観音様」とも呼ばれ、一つだけお願い事をするとご利益があると言い伝えられているようです。
おふさ観音の御本尊は本堂内に安置される十一面観音菩薩です。かつては京都比叡山北谷の観音院のご本尊でしたが、慶安3年(1650年)4月におふさ観音に遷座されています。
普段は秘仏とされるおふさ観音の御本尊。
厨子の中に秘仏として安置され、その身代わりに ”お前立ち” の大きな十一面観音像が祀られています。普段は秘仏とはいえ、毎年4月17日と18日には秘仏御開帳が行われ、参拝者に広く特別公開されています。
亀の池に佇む小房観音の亀。
グッと頭をもたげて、背伸びでもしているかのようです(笑)
おふさ観音は大和十三仏霊場の第八番札所にもなっています。子年生まれの守り本尊・観世音菩薩が祀られる小房観音・・・大和十三仏御朱印めぐりでは、十三仏守護屏風台紙が無料プレゼントされます。一ヶ寺に付き御朱印料は300円ですが、十三仏霊場巡拝を終え、通夜枕屏風としても使える守護屏風台紙を手に入れてみるのもいいですね。
おふさ観音駐車場から風鈴まつり会場へ
私はおふさ観音の近くに住んでいることもあり、毎回おふさ観音へは車でアクセスしています。
無料駐車場も完備されており、いつも有難く利用させてもらっています。
縄手町交差点近くの風鈴まつり駐車場。
「風鈴まつり駐車場」と案内されていますが、イベントの行われていない期間中でも普通に利用することができます。縦長のスペースで、斜めに車を駐車するスタイルです。ここに車を停めれば、おふさ観音まで徒歩3~4分ぐらいでしょうか。
こちらは、藤原京資料室の駐車場。
今回は藤原宮跡にも少し立ち寄ったため、この駐車場に車を駐車しました。
おふさ観音の駐車場からは少し離れていますが、ここからでも十分におふさ観音まで歩いて行けます。
おふさ観音の鐘楼前に、少しだけバラの花が残っていました。
初夏の境内に咲き誇るバラは、風鈴と同じくおふさ観音の代名詞にもなっています。薔薇の名所としては霊山寺のバラがよく取り上げられますが、おふさ観音のバラもそれに匹敵するぐらいの見事さです。
大師堂の脇に「大和長寿道・キーワード バラとハーブ」と題する案内板がありました。
天明年間(西暦1781年~89年)
妙円尼の創建と伝えられています。本尊は空海作と伝えられる十一面観音像で癪の観音として信仰を集めています。
近年は長寿とぼけ封じを願う信者が多く訪れています。またバラの花一千種とハーブの花が咲き乱れる「花の寺」として有名です。
本尊の十一面観音像は弘法大師空海作なんですね。
癪の観音とは、癪の病を取るという意味だと思われます。大和長寿道でつながる安倍文殊院とおふさ観音は、共にぼけ封じ霊場としてもその名を知られています。今まで注意して見ていなかったのですが、おふさ観音にはハーブの花も咲くんですね。
亀を模った風鈴が揺れています。
鉄製とおぼしき風鈴は、岩手県の南部風鈴なのかもしれません。
うさぎの風鈴もありました。
陶磁器製でしょうか?
様々な素材を使って、伝統の技の元に作られる風鈴の数々・・・やはり見ていて飽きませんね。
茶房おふさの風鈴展示会
おふさ観音境内の喫茶店茶房「おふさ」に於いて、日本各地の風鈴展示会が催されています。
期間中不定休ではありますが、午前10時~午後4時まで全国各地の風鈴を見学することができます。
夏季限定メニューとしてかき氷も提供されているようです。
奈良の氷室神社界隈が ”かき氷” で盛り上がっていますが、やっぱり暑い夏にはかき氷が食べたくなりますよね。そう言えば、茶房おふさでバラまつり期間中にバラジュースを飲んだことを思い出します。バラジュースにははにわ饅頭が付いていて、この土地ならではのおもてなしが印象に残りました。
境内には紫陽花も咲いていました。
只今茶房おふさの前に広がる、日本庭園円空庭が無料公開されています。
大師堂横に吊り下げられた風鈴。
おふさ観音の風鈴まつりは入場無料です。
風鈴の涼しい音色が厄を祓います。7月17日の午後6時~9時まで夜まつりが催され、ランプの灯りで風鈴が幻想的に浮かび上がります。門前には露店も並びますので、暑気払いをしたい方は是非訪れてみて下さい。
おふさ観音では、一年中厄払い特別祈祷が行われています。
受付時間は午前9時~午後3時で、予約は不要となっています。祈祷料は5,000円で授与品として厄除のお札、厄除のお守り、厄除け五福勾玉守りストラップ、招福とろろ昆布、清め箸が授けられます。前厄、本厄、後厄の年齢をチェックして、厄除参りにおふさ観音を訪れてみましょう。
蛙の描かれた風鈴。
ついこの間まで田植えシーズンだと思っていたら、早いものでもう夏休みを迎えようとしています。
夏はどうしても食欲が落ちます。朝餉(あさげ)、夕餉(ゆうげ)と言うように古来より「ケ」は食のことを意味していました。食が枯れると、まさしく「気枯れ(ケガレ)」の状態に陥ってしまいます。気枯れ(けがれ)は穢れ(けがれ)に通じています。
穢れは払わなければなりません。
上半期の穢れは茅の輪をくぐることによって祓いましたが、さらにヒートアップする真夏には風鈴の音を聞いて心穏やかに過ごしたいものです。
高野山真言宗別格本山おふさ観音
住所:奈良県橿原市小房町6-22
【おふさ観音の拝観案内】
- 拝観料 :無料(境内自由)
- 拝観時間:午前7時~午後5時(年中無休)
- アクセス:近鉄大和八木駅下車徒歩25分、近鉄大和八木駅より奈良交通バス「小房」下車徒歩5分、近鉄橿原神宮前駅下車タクシー5分