南の方角を守る朱雀。
羽を広げる鳳をイメージした朱雀は、四神の中でも勢いを感じる存在です。
色で表せば燃えるような赤、朱色です。人生のサイクルに例えるなら、それは働き盛りの壮年期に当たることでしょう。
平城宮跡朱雀門。
朱雀門といえば、平城京・平安京大内裏外郭十二門の一つで、宮城南面中央に位置する正門です。朱雀大路からの入口に当り、最も大切な玄関口としての役割を果たしています。
五行思想の「火」に相当する朱雀
奈良県明日香村には四神壁画で有名な高松塚やキトラがありますよね。
日本広しと言えども、現存する四神壁画は高松塚古墳とキトラ古墳に限ります。そこに葬られる被葬者の四方を囲むように描かれた四神。南の壁面には赤い朱雀が描かれています。
平城京朱雀門の門前が整備されていました。
カフェなどもオープンしており、以前のようにだだっ広いだけではありませんね。
四神は以前から知っていましたが、五獣という括りも存在するようです。
五獣は木火土金水の五行にそれぞれ充てられ、東の青龍は木、南の朱雀は火、そして中央に位置する土には麒麟・黄竜が相当します。そして西の白虎は金、北の玄武が水と続きます。
夏のことを朱夏と言ったりしますが、これも朱雀との関わりを感じさせます。
明日香村のキトラ古墳ですが、その石室は盗掘に遭っていました。ところが、運よく南壁の朱雀は残っていたのです。
奇跡的に蘇った朱雀を目の当たりにし、その運の良さにあやかります。
栄枯盛衰の世の中にあって、最盛期にも通じている朱雀。天子は南面すると言いますが、太陽が昇り切った南の方角には古来より運気が宿っていたのでしょう。
歴代天皇の中にも朱雀天皇という天皇がいらっしゃったようです。第61代の天皇で、醍醐天皇の第14皇子に当たり、西暦930年に即位しています。さらには、天武天皇朝の年号「朱鳥」の異称を朱雀と言ったようです。
五獣の中央、土を表すという麒麟。
大相撲の世界にも、かつて麒麟児という突っ張りの得意な力士がいたことを思い出します。麒麟はお隣りの中国において、聖人が出る前に現れるという想像上の動物です。最も傑出した人物を例えて「麒麟」と称することもあります。
麒麟の描かれた壁画は存在しないのでしょうか。朱雀門を見上げながら、ふとそんなことを考えました。