日本の伝統文様である青海波(せいがいは)。
同心円の上半分が扇状に重なり合います。青海波はエジプトやペルシアをはじめ、世界各地に見られる文様のようです。大神神社祈祷殿にも青海波の意匠を見つけました。
祈祷殿の跳高欄(はねこうらん)。
その端の錺金具に、青海波の文様が描かれます。
高欄とは要するに手摺りのことですが、その端が跳ね上がったものを跳高欄と言います。真っ直ぐな組高欄や擬宝珠を付けた擬宝珠高欄もあり、装飾性に富んだ横木の部分です。高欄(勾欄)は3段の水平材で構成され、下から地覆(じふく)、平桁(ひらげた)、架木(ほこぎ)と呼ばれています。
青海波文様&海を渡るなでうさぎ
波のうねりを表す青海波。
この伝統的文様は「青海波」という雅楽の舞曲から名付けられ、江戸時代の舞人の装束の袍(わたいれ)にも見られます。
大神神社拝殿。
国の重要文化財で、江戸時代の寛文4年(1664)に徳川家綱公により再建されています。
高欄地覆(こうらんじふく)の錺金具。
三段ある高欄の最下段ですね。ハート形の猪目もデザインされています。
青海波文様。
高欄のことを古語では「おばしま」と表現したようです。
おばしまに夜散る花の立ち姿~「猿蓑」
昔から高欄は、職人さんの腕の見せ所だったのかもしれません。
最上段の架木(ほこぎ)の先端を反らせた大神神社の高欄は、まるでカブト虫の角を思わせます。遊び心とデザイン性を感じさせますね。
台座には波の文様が彫られています。
青海波つながりで少し気になりました。波頭が盛り上がり、高波を思わせますね。
ここで、私の頭の中に因幡の白兎のストーリーが浮かびました。
隠岐の島に居たというウサギは「気多(けた)の岬」へ向かうため、ワニ鮫を騙して大海原を渡り切ります。ダマされて怒ったワニ鮫がウサギの皮を剥いだというお話です。そこで登場するのが、大神神社の御祭神である大物主命。
オオモノヌシは兎を憐れみ、川の真水で体を洗って蒲の穂に寝ころべば、荒れた肌も元通りに治るだろうとアドバイスします。古代には、蒲の穂の花粉は薬用とされていたようです。
因幡の白兎を祀る「白兎(はくと)神社」ですが、今も鳥取市白兎に鎮座しています。隠岐の島を望む白兎海岸は、白砂の美しい海岸で観光客にも人気です。
大神神社の造営工事ももうすぐ終わりそうです。
能楽堂と直会殿が新たに竣工します。
海無し県の奈良県ですが、大神神社の境内には海をイメージさせる意匠がいくつか見られました。