三吉石塚古墳を見学して参りました。
所在地は広陵町大字三吉字石塚です。
綺麗に復元整備された古墳で、駐車場もあります。馬見丘陵公園や竹取公園の南に位置し、陵墓参考地・新木山(にきやま)古墳の西側に当たります。
三吉石塚古墳。
円筒埴輪や朝顔形埴輪がずらりと並んでいました。
古墳全体で370本もの埴輪が巡っていたと推定されます。その大部分が円筒埴輪で、6本に1本の割合で朝顔形埴輪が立てられていました。この埴輪は複製品ですが、古墳時代の様子が今に蘇ります。
古墳時代中期の帆立貝式古墳
三吉石塚古墳は帆立貝式古墳です。
大きな括りでは前方後円墳なのですが、前方部が非常に小さいことがその特徴です。
前方部は東側、つまり新木山古墳(三吉陵墓参考地)の方を向いています。馬蹄形の周濠が掘られ、古墳の規模は外堤を含めて全長62mになります。
三吉石塚古墳の立体模型図。
まさしく帆立貝の形をしていますね。
後円部は二段築成のようです。一段目には円筒埴輪と朝顔形埴輪の埴輪列が巡り、後円部頂上には蓋(きぬがさ)・短甲(たんこう)・家などの形象埴輪が立てられていました。墳丘自体の全長は45mとされます。お隣りの新木山古墳の全長が200mですから、それに比べればコンパクトな古墳であることが分かります。
周濠に渡された橋。
びっしりと葺石が並び、とても美しく復元されています。
墳丘上からの眺めもなかなかのものです。
周囲を巡るのは町営墓地です。北の方角には広陵町立図書館が見えています。
県指定史跡の三吉石塚古墳。
墳丘と周濠の内側には10~30cmの葺石を施しています。特に、後円部の葺石が縦に一列に並ぶところ<界石列(かいせきれつ)>があり、この葺石の列石間がひとつの作業単位(幅約90cm)であり、作業方法を示す基準であったと考えられます。
また、前方部の葺石は葛城市西方に分布する黒雲母花崗岩、後円部の葺石は香芝市の二上山麓で採れる輝石安山岩が使用されていました。
前方部と後円部に使用された石材ですが、それぞれ異なるようですね。
墓道か?前方部南東隅の張出
申し訳程度に付いている三吉石塚古墳の前方部ですが、その形は左右対称ではありません。
南東部に張り出し部分があるのです。
この箇所です。
このポイントだけ、極端に周濠幅が狭くなっています。
模型で確認すると、その様子が明らかですね。
他に類を見ない張出部であり、これを造り出しと言っていいのかよく分かりませんが、誰が見ても不自然です。古墳を解説する冊子には「墓道として造られた可能性」が指摘されます。
調査前の三吉石塚古墳には、墳丘部の中心を縦断する道があったと言います。埋葬施設が不明なため釈然としませんが、築造当時の状況を伝える貴重な部分であることに違いはありません。
5世紀後半の古墳ではないかと推測されます。
あまりにも綺麗に整備され、古墳見学の醍醐味は味わえないかもしれませんが、これはこれでスッキリするものを感じますね。
埋葬施設が未調査なわけですから、致し方ないでしょう。
1,500年前の古墳とは思えないほど、見事にリニューアルされていました。
奈良交通バス「赤部」停留所と駐車場
三吉石塚古墳へのアクセスですが、公共交通機関を利用する場合、
近鉄大阪線大和高田駅から奈良交通バス(竹取公園東)行きに乗車します。「赤部」バス停で下車し、西へ徒歩3~4分で到着です。
左手に見えているのが三吉石塚古墳です。
手前右側には石材店があります。
赤部バス停。
「かぐや姫の里」と書かれていますね。
このまま北へ向かえば、竹取公園、町立図書館、県立馬見丘陵公園へアクセスします。
広陵町はかぐや姫の里です。
町を挙げてかぐや姫をPRしています。
三吉石塚古墳の案内。
発掘調査当時の写真も掲示されていました。
ここが駐車場です。
決して広くはありませんが、駐車料金は無料です。
いわゆる観光地でもありませんので、満車になることもそうないでしょう。
墳丘から望む新木山古墳や二上山
三吉石塚古墳の見所は、墳丘からの景色です。
真下に見えるのは町営墓地ですが、すぐ東に新木山古墳、遥か西には二上山を望むことができます。
1987年の発掘調査後に整備された三吉石塚古墳。
遺構を保護するため、盛土で保存した上にコンクリートで基礎が造られました。
基礎の上に、持ち上げた石が葺かれています。
墳丘中段のテラスと墳頂、外堤の一部に埴輪が並んでいたそうです。
復元埴輪は複製品ではありますが、墳頂部の形象埴輪を除いて磁器で製作されています。
墳頂へ続く階段。
この仰ぐ格好がまたいいですね。
墳頂に到着。
かなり広いですね、全方位に視界が開けていました。
二こぶラクダのような二上山も見えています。古代人たちも西の方角に聳える二上山が好きだったはずです。
北の方角には広陵町立図書館があります。
そこから右手に視線を移せば、八重桜の名所・新家長福寺があるはずなのですが・・・ちょっとこの写真からでは分かりづらいですね。
東に見えているのは新木山古墳の後円部です。
場所が近いことから、三吉石塚古墳は新木山古墳の陪塚ではないかとする説もあるようですが、5世紀前半築造の新木山古墳とは時期的にずれがあります。
新木山古墳の右手前に見えているのは石材店ですね。読売テレビの情報番組に『お宝発見!街かど☆トレジャー』というコーナーがありますが、トレジャーハンターのますだおかだ増田さんが石材店の方と絡んでおられる場面を視聴しました。
増田さんは墳頂にも登られ、”お墓に囲まれた古墳” を取材なさっていました。
確かに三吉石塚古墳の第一印象は「お墓だらけ」といったところでしょうか(笑)
ずらりと並ぶ埴輪の外に、お墓、お墓、お墓・・・
ここでしか見られない光景かもしれません。
お墓や埴輪にばかり目が行きがちですが、葺石も見事です!
築造当時の積み方に倣い、精緻に葺かれています。
見下ろすアングルも素敵です。
なかなかインスタ映えのする古墳ではないでしょうか。
うん?向こうに宝形造の屋根が見えますね。
ズームアップしてみます。
ここもまたお墓に囲まれていました。
これはもう、ちょっとした石垣ですね。
角度を付けながら墳頂へと積上げられています。
一定の間隔でリズミカルに並ぶ埴輪。
朝顔形埴輪の間には、お行儀良く5本の円筒埴輪が並びます。
野に咲く花。
葺石の隙間に根を下ろしているのでしょうか。
周濠や堤に囲まれた三吉石塚古墳。
その外側から見ていると、何かこう・・・動物園の展示法が頭をよぎります(笑)
発掘調査当時の写真。
こちらは、前方部の北西隅ですね。実にリアルに蘇ります。
この辺りで帆立貝式古墳といえば、馬見丘陵公園の乙女山古墳を思い出します。
乙女山古墳はさほど整備もされておらず、観光的には断然こちらの方がおすすめです。
新木山古墳もこの近さです!
巣山古墳と共に、馬見古墳群の中でも中核を成す大型前方後円墳です。墳丘くびれ部には造り出しがあるようで、精美な盾形周濠も見られます。
墳丘に登ることができ、眺望もいい三吉石塚古墳。さらに綺麗に整備されたフォルムは、帆立貝式の形状が実感できます。古墳見学の初心者にも是非おすすめしたい古墳だと思われます。