人の死は悲しいものです。
それも人生の師と仰ぐ人の死に直面すれば、我を忘れて嘆き悲しむものなのかもしれません。下の写真は法隆寺五重塔の初層四面に展開する塑像群です。国宝に指定されており、中でも北面の釈迦涅槃(涅槃像士)はよく知られます。
塔本四面具(とうほんしめんぐ)の北面涅槃。
釈迦の十大弟子と思われる僧侶たちが、人目もはばからずに嘆き悲しんでいます。
素晴らしくリアルな表現で迫ります!胸をかきむしっているのでしょうか、グッと両手を膝の上に置いて悲しむ僧侶も居ます。
国宝に指定される写実表現の天平彫刻
釈迦の涅槃を描いた絵画や仏像レリーフを各地で見て参りましたが、法隆寺の塔本四面具はその中でも別格です。
鬼気迫る写実表現が胸を打ちます。
厳しい修行のためか、あばら骨の浮き出た老僧たちが、まるで駄々っ子のように泣き喚いています。ショッキングなのです。心の平安を投影する仏像に慣れ親しんでいると、こういう自由奔放な表現法に面喰ってしまいます(笑)
法隆寺中門と五重塔。
中門の見所はエンタシスの柱や金剛力士像(重要文化財)ではないでしょうか。奈良時代の金剛力士像も塔本四面具と同じく、塑造による仏像とされます。
世界最古の木造五重塔も美しいですね。初重から五重までの屋根の逓減率が高く設計されているのが特徴です。つまり、上へ行くほど小さくなっているのです。五重目の屋根の一辺は、初重の屋根の二分の一サイズだと言います。美しいそのフォルムは、きっと計算し尽くされたものなのでしょう。
法隆寺五重塔は国宝ですが、その内部にも実に80件におよぶ国宝があるそうです。
これはびっくりですね。
この土塀がいい雰囲気を醸します。
法隆寺の心臓部である西院伽藍へ向かうアプローチ道・・・世界遺産法隆寺へと一歩一歩近づいている実感があります。
中門の金剛力士像。
奈良時代末に大きな損傷を受け、一度塑形し直されたようです。
五重塔初重には鳩除けの金網が張られています。
そのため少し見づらくなってはいるのですが、国宝の塔本四面具は必見です。
北面の釈迦涅槃の他にも、東面には病床の維摩居士を訪ねる文殊菩薩が描かれています。文殊菩薩と維摩居士の問答(維摩詰像土)シーンもとてもリアル!西面では釈迦の分舎利シーンが描写されています。さらに南面に目を移せば、釈迦入滅から56億7千万年後に弥勒仏がこの世に現れる場面が再現されます。
五重塔の姿に見惚れるのもいいですが、一歩奥にあるチェックポイントにも目を向けてみましょう!