春日大社の御仮殿(移殿)北側にある宝庫。
春日大社の中では本殿に次ぐ重要な建物とされ、国の重要文化財に指定されています。
春日大社の宝庫。
左手に写っているのは風宮神社の七種宿木です。宝庫に取り付けられた扉が見えていますが、この東向きの扉を正面とする建物です。朱塗りの校倉造りで、巧みに厚板が組み上げられています。
実を言うと、私は今までに幾度となくこの宝庫を目にしています。内侍門の外側からも宝庫を見学することができるのですが、回廊の外から見る宝庫はちょうどその裏側に当たります。
3月13日の勅祭・春日祭の鏡や太刀を封印
見た目には地味な印象を受ける宝庫ですが、なぜこの建物がそれほど重要な意味を持つのでしょうか?
それは春日祭の神宝が納められていることによります。
春日祭は勅祭です。天皇の勅使が馳せ参じる勅祭は日本広しと言えども、春日大社の春日祭をはじめ全国に三つしかありません。賀茂神社の葵祭、石清水八幡宮の石清水祭と並び、歴史にその名を刻む春日祭・・・春日祭はその前儀として、一之鳥居に大きな榊を立てる「辰の立榊式(たつのたてさかきしき」(3月10日)から始まります。国家の安泰と国民の繁栄を祈る儀式として知られ、日本三大勅祭の一つに数えられています。
重要文化財宝庫一棟の案内板。
伝 大同2年(807)創建
古くは「宝蔵(ほうぞう)」あるいは「神庫(しんこ)」とも呼ばれ、本殿に次ぐ重要な建物である。殿内には春日祭などの御神宝を納め、かつては鑰匙(やくし;鍵)は官に保管されるという厳重さであった。
宝庫の中には、春日祭の際に本殿を飾るという鏡や太刀、鉾、弓矢などが納められています。
およそ1,100年前の平安時代から続く春日祭は春日大社大宮の例祭であり、若宮神社の春日若宮おん祭と並んで春日大社を代表する祭事とされます。春日大社にとっては大変重要なイベントであり、文字通りその鍵を握っているのが宝庫という位置付けなのでしょう。
宝庫の裏側。
右手に見える建物は、同じく重要文化財の御仮殿(移殿)です。
御仮殿は現在、春日大社四柱の神様がお遷りになられている建物です。
かつては内侍殿と呼ばれていた時期もあり、春日祭の折に朝廷から発遣された内侍(女官)が過ごした社殿でもあったようです。橿原神宮にも勅使殿という建物がありますが、それとよく似た機能を持っていたのかもしれませんね。
御仮殿で春日四神に手を合わせ、建物の外へと出ます。
さすがは春日大社、至る所に釣燈籠が見られますね。
固く閉ざされた宝庫の扉。
春日祭では、魚や穀物を盛り分けた御棚神饌(みたなしんせん)が本殿に供えられます。馬を引き回す儀式や勅使が喜びを表す拝舞(はいぶ)なども行われ、祭りは最高潮に達します。誠に残念ながら回廊内での祭事は拝観不可となっています。参道沿いで祭事を見守ることはできるようですので、是非来年は足を運んでみようと思います。
春日大社の鹿絵馬。
式年造替を記念して登場した絵馬(笑)
奈良県産のヒノキ材を使った直径約10cmの可愛らしい絵馬です。鹿絵馬のデザインは県と奈良女子大の学生らが共同で考案したと言います。目鼻の描かれていない雄雌二種類の鹿絵馬に、参拝客が自由に顔を描き入れることができます。
春日大社の結婚式受付所。
直会殿の南東片隅に設けられていました。
大神神社の神社婚もかつてないほどの勢いで増えていますが、春日大社の挙式も人気があるのではないでしょうか。
御仮殿特別参拝で井栗神社から順路に従ってお参りして来ましたが、ちょうどこの場所が特別参拝の出口になっていました。直会殿と幣殿の間を抜けて、砂ずりの藤の藤棚へと出ます。幣殿前にはお守り授与所もあり、数多くの観光客が集っていました。Wi-Fiエリアにもなっているようで、スマホ画面に見入る外国人観光客の姿も見られました。