春日大社末社の白乳神社から能登川に沿って伸びる滝坂の道(旧柳生街道)。
民家の間を通る滝坂の道を登って行くと、程なく左手に節分の魔除けで知られる扉(とべら)の木が植えられていました。
トベラの葉っぱ。
楕円形の葉の縁がくるっと丸まっています。
魔除けのトベラ!石仏の多い滝坂の道
トベラ科トベラ属に分類される扉(とべら)は、その枝葉を切ると悪臭が解き放たれます。
そのため、節分の際にはイワシの頭と共に魔除けとして戸口に掲げられました。「扉の木」が訛ってトベラになったと言われています。
トベラの案内札。
以前に山の辺の道の夜都岐(やつぎ)神社を参詣した際、民家の戸口に柊鰯(ひいらぎいわし)を発見したことを思い出しました。
柊の葉っぱに付いた鋭い棘で鬼の目を刺し、鰯の臭いで鬼を退散させるという言い伝えがあります。柊鰯(ひいらぎいわし)にさらに、扉(とべら)を付け加えれば鬼に金棒になるのではないかと想像します(笑)
東海自然歩道 滝坂の道が案内されています。
御蓋山南麓から春日奥山に至る谷間の道。奈良時代には既に信仰の道として開かれていたと伝わります。中世の石仏が数多く残されており、石仏ファンにはおすすめの旧街道となっています。
両脇にしばらく民家が続き、本格的な山道に入る手前にトベラの木が植えられています。
かつては柳生の里人が行商のために通ったと言われる滝坂の道。行きは道中の朝日観音の前で手を合わせ、帰りは夕日観音を拝んで無事を祈りました。そんな滝坂の道の手前にあるトベラは、やはり悪しきものの侵入を防ぐ結界の役割を果たしているのでしょうか。
トベラを目にした後、さらに上手へ登って行くと、いよいよ本格的な山道へと入って行きます。
滝坂の道は数多くの石仏で知られ、寝仏・夕日観音・三体地蔵・朝日観音・首切地蔵・春日山石窟仏・地獄谷石窟仏などが道中に待ち受けています。
木陰に包まれ、いよいよ滝坂の道が歴史街道の趣を漂わせ始めます。
ここは大和青垣国定公園内に含まれるようですね。
奈良県新公会堂の前で草をはむ鹿。
ここから南東方向の山間に滝坂の道はあります。滝坂の道の入口付近の芝生にも鹿のふんが見られました。奈良公園の鹿は春日大社の上の禰宜道付近を通って滝坂の道周辺まで足を伸ばしているのでしょう。
滝坂の道に架かる橋の下を能登川が流れています。
能登川の渓流に沿って登る山道が滝坂の道です。
滝坂という地名にも、能登川との関連が浮かび上がります。滝坂のタキは、古語の「たぎる」に由来しています。水が激しく流れている様を表す「滾(たぎ)る」という言葉。清冽な印象を与える滝坂の道は、見方を変えれば少し危険を伴う場所であるのかもしれませんね。
路肩が少し崩れてきているのでしょうか。
滝坂の道の入口付近は工事中のようでした。
高畑界隈の新薬師寺や白毫寺を訪れたなら、少し足を伸ばして滝坂の道ウォーキングを楽しんでみるのもいいですね。今までの奈良観光では得られなかった体験があなたを待っていることでしょう。