西大寺の節分豆撒き行事に参加して来ました。
近鉄大和西大寺駅から徒歩3分の場所にある西大寺。
交通至便の西大寺なのですが、桜井市からだと少し不便に感じます。車でアクセスする際も、奈良市中心街から少し西へ行く必要があります。今までそのちょっとした事が、西大寺参詣の壁になっていました。
節分会の福豆袋。
境内の愛染堂から投げられた福豆をゲット!
立春を翌日に控えた2月3日。各地で節分祭が催される一日ですね。普段は敬遠しがちの西大寺ではありましたが、この日ばかりは違います。一路西大寺を目指して、国道24号線を車で向かいました。
当日は14時と15時の二回に分けて星供が行われ、その後に福豆袋が撒かれます。福袋が当たる豆袋も用意されており、境内は多くの参拝客で賑わっていました。
星を供養する真言律宗総本山の星祭
そもそも、なぜ星祭(ほしまつり)と言うのだろうか?
少し気にはなっていたのですが、ご住職らしき方のお話でおぼろげに理解できました。
よく「星の下(もと)に生まれる」と言いますが、まさしくその「星」こそが星祭の「星」なんだそうです。良い星も悪い星もありません。たとえ今年は真っ黒な星でも、それは限りなく真っ白な星に向かっている。反対に真っ白な星の下と喜んでいても、それは確実に真っ黒な星へと向かっているのだそうです。
豆が撒かれる愛染堂前に集まる参拝客。
星祭の赤い幟(のぼり)が風に揺らめきます。「星祭 除災招福 家内安全 祈祷守護」と記されていますね。
星祭とは?辞書を紐解いてみると、以下のように解説されています。
密教で、除災・求福のために当年星または本命星(ほんみょうせい)をまつること。星供(ほしく)。
本命(ほんみょう)は生まれた年の干支であり、本命星は九星の中で、その人の生まれた年に当たる星を意味すると・・・何だか分かったような分からないような(笑) 要するに人は誰しも、何がしかの星を持って生まれているということです。この星が良かったのに、あの星が良かったのにと選ぶことなど出来ません。いわば、宿命のようなものですね。
福袋を頂いて、西大寺創建の由緒を伝える四王堂前でパチリ!
像高6mを超える重文・十一面観音立像をご本尊としています。今回は時間がなく、四王堂の拝観はかないませんでした。堂内には四天王像も安置されているようで、次回の楽しみに取っておこうと思います。
西大寺本堂。
「壁無しのお堂」と呼ばれる優美な建築で知られます。
周りには土壁が一切なく、総板張りで仕上げられています。寄棟造の屋根のラインも実に美しく、西大寺の本堂の名に恥じない立派な建物です。
こちらが豆撒きの行われた愛染堂。
向かって左の妻側から豆が投げ入れられます。祝い事ではお馴染みの紅白の横断幕が掛かっていますね。
この日は愛染堂秘仏の愛染明王坐像が特別開扉されていました。
私が訪れたのは午前中だったため、堂内の愛染明王坐像を拝ませて頂くことができました。拝観料300円を納めて、愛染堂内に入ります。普段は御前立の愛染明王のみの拝観ですが、運よく西大寺の象徴ともいえる仏像に手を合わせることができました。
愛染堂内では、先ごろ国宝に指定された興正菩薩坐像も拝観できます。叡尊80歳の時の肖像彫刻で、その写実性に息を呑みます。愛染明王坐像の厨子の背後には、既に節分祭の豆が用意されていました。あっ、この豆が撒かれるんだなと思いながらしばしの時間を過ごします。
鎌倉時代の名僧・叡尊は西大寺中興の祖であり、西大寺を真言律の根本道場として生まれ変わらせた人物です。真言律宗総本山ですから、おそらく密教系の教えも入っているのでしょうね。
西大寺愛染堂。
紅白の横断幕の上部には、協賛企業の名前がずらりと並びます。
当り付きの福豆袋が用意されているのも、協賛企業あっての賜物です。笑い話風にご住職がお話されていましたが、来年はもっとこの場所に協賛者の御名が並べば、おのずと福袋の数も増えるというものです。皆で作り上げる星祭であることを忘れてはなりませんね。
14時の星供を前に、徐々に参拝客が集まり出します。
午前中はひっそりとしていた境内ですが、さすがにお祭りムードが高まって参りました。
今か今かと待ち受ける参詣者たち。
この時間が長いんですよね(笑) 他の豆撒き会場でも同じだと思われますが、待ち時間には色々なことが頭をよぎります。家族のこと、仕事のこと、社会のこと・・・節目の日の心象風景は人様々です。
愛染堂前の受付所。
法被の背中に描かれたデザインが気になりますね。西大寺の「西」の字が浮かび上がります。
ご住職のマイクパフォーマンス。
豆撒きを前に、有難いお話にじっと耳を傾けます。
現代では節分といえば立春のことを意味しますが、そもそも節の分け目を節分と言い、立夏・立秋・立冬も節分なのです。ちょうど節分の時期には禍を受けやすいと云います。季節の変わり目には体調も崩しやすいのでしょう。絶妙のタイミングで催されるのが節分祭なのですね。
西大寺愛染堂の懸魚(げぎょ)。
妻の部分に施された木造建築の意匠に目を凝らします。待ち時間が長かったので、つい凝視してしまいました。火難除けのおまじないとされる懸魚ですが、確かに魚の尾びれを思わせます。カブラの形に似ていますね。「蕪懸魚」に分類されるデザインでしょうか。
福男の登場です。
一人一人のお名前が紹介され、万雷の拍手で出迎えます。神社参拝では柏手を打ちますが、福男を迎える拍手もより大きな音が推奨されます。音で魔を切る、と申しましょうか。音は神様を招き寄せる一種の合図にもなっています。
激しい争奪戦の中、手にした福豆袋。
大神神社の節分祭に比べれば、西大寺の方が取りやすかったかもしれません。参拝客の数も西大寺の方が少ないですからね。撒かれる豆の数まではよく分かりませんが、受け手が少ないのは有難いことです(笑)
裏側を見ると、「福袋」と記されていました。
これが当りの印です。逆にハズレの福豆袋には何も書かれていません。
豆撒き終了と同時に、光明殿の前に行列ができました。
当り付きの福豆袋を手に、福袋との引き換えが行われます。
光明殿では西大寺名物の大茶盛が催されます。赤膚焼の大茶碗で回し飲みする伝統行事ですが、この日は福袋の引換所として使われていました。
無事に福袋と引き換えると、「引換済み」を表すレ点が記されます。
3つの内の一つだけが当たりでした。
気になる福袋の中身ですが、フリーザーバッグ、うまい棒、ビッグカツ、ラムネ、年忌早見表等々でした。
景品のラムネ。
帰りの車中で福袋を開封しました。
こちらは円盤状の年忌早見表。
今回は14時からの豆撒きに参加しましたが、再度15時からもトライすることができるようです。私は所要があったので一回だけの挑戦でしたが、二度も豆撒きに参加できるのは西大寺ならではの特典ではないでしょうか。トライアゲインが許されている、これは魅力的ですね。
今回の訪問では本堂内の御本尊・釈迦如来立像も拝観することができませんでした。本堂と四王堂の拝観は、次の機会に譲ることに致します。