4月8日に行われる飛鳥寺の花会式(はなえしき)。
お釈迦様の誕生を祝う仏教行事で、灌仏会(かんぶつえ)・仏生会(ぶっしょうえ)とも呼ばれます。日本最古の寺院・飛鳥寺の御本尊は通称「飛鳥大仏」の釈迦如来坐像です。そのご本尊の御前に、右手を上げた誕生仏が安置されていました。
飛鳥寺花会式の誕生仏。
右手で天を指し、左手で地を指して「天上天下唯我独尊」と称した誕生時の釈迦を表します。
お釈迦様がお生まれになった時、産湯を使わせるために九匹の龍が天から清浄水を注いだという伝説が残ります。花会式では誕生仏に甘茶を掛けて祝いますが、この龍伝説に因んでいるようです。
花御堂に桜!お釈迦様の誕生祝い
飛鳥寺へ出向く際、万葉文化館の駐車場を利用します。
万葉文化館前庭の植物を愛でながら、飛鳥寺最大のイベントへと向かいます。前庭では、幾重にも重なるサトザクラが綺麗に咲いていました。
飛鳥寺境内の桜。
飛鳥寺の桜もちょうど見頃のようです。
久しぶりの釈迦如来像とのご対面に心が踊ります。
山門前には馬酔木の花も咲いており、春爛漫の飛鳥寺を楽しむことができました。
本堂前の誕生仏。
台座の周りの液体がおそらく甘茶でしょう。柄杓を使って掛ける習わしです。
かつて東大寺ミュージアムで、誕生釈迦仏を見学した記憶が蘇ります。可愛らしい印象の仏様でしたが、飛鳥寺の誕生仏も実に愛らしいですね。
誕生仏を覆う花御堂。
花御堂(はなみどう)とは誕生仏を安置する小堂のことで、色鮮やかな花で飾り立てます。
本堂内にも誕生仏がいらっしゃいました。
飛鳥大仏の御前で、右手を上げるポーズを取っていらっしゃいます。
山門前の馬酔木の花。
釣鐘状の房がたくさん垂れ下がっていました。
御尊像の写真と共に、花会式が案内されていますね。
通常であれば法要後に講演なども行われるようですが、今年はコロナウィルス感染拡大により中止とのことです。
私が飛鳥寺に着いたのは正午12時過ぎでした。
法要は14時からでしたので、ほんの少しだけ境内を周って参拝を終えました。
五色幕の幟ですね。
長居することなく、さっさと引き返す予定で出掛けました。写真撮影が主な目的だったため、リズムよくご紹介して参ります。
飛鳥寺本堂。
普段は閉ざされている本堂ですが、花会式の日には外から飛鳥大仏を拝むことができます。拝観料も不要ですので、とても有難い一日ですね。本堂前には礎石が並び、飛鳥大仏の姿が覗きます。
花御堂を飾る花。
いや~色とりどりです!
花御堂に安置される誕生仏。
誕生時のお姿とは言え、既に曲線を描く衣紋が美しいですね。もちろん、お釈迦様ですから煌びやかな装飾品は見られません。誕生時に降り注いだという、甘露に濡れたお釈迦様を想像します。
この日は本堂内への立ち入りは禁止されているようです。
普段の拝観では間近に飛鳥大仏を見上げながら、お寺の方の解説に耳を傾けることができます。
ほんの少しだけ右方向に傾げていらっしゃいます。
なぜ真正面を向いていないのか?
聖徳太子生誕の橘寺の方を向いているとか、諸説紛々としています・・・その真相やいかに。
像高約275cmの飛鳥大仏。
後世の補修も見られますが、お顔や右手の大部分は造立時のまま残ります。日本最古の仏像であり、アーモンド形の目が特徴的です。畏れることはないよと引き上げた右手の施無畏印が、7世紀初頭のまま残っているとは奇跡ですよね。
本堂内には幾つかの法具も準備されていました。
散華のようなものも見られます。
本堂内の誕生仏。
こちらは花御堂ではないようです。
灌仏桶(甘茶を入れるお椀状の容器)には、蓮華座が描かれているようです。
手前の誕生仏よりも小振りですね。
甘茶を硯に入れてすれば、書が上達するそうです。
習字上達の願掛けにもなる甘茶ですが、植物の葉を蒸して揉み、それを乾かしたものが使われます。甘味のある飲料にもなり、参拝客にも甘茶が振る舞われます。
花会式で使われる道具。
座布団の上にスタンバイしていました。
花会式の法要では、供え物を手伝いに仏前に捧げる奠供(てんぐ)の儀式が行われます。さらには散華などが続き、僧侶の読経の中、参拝者たちは誕生仏に甘茶を掛けて合掌します。
飛鳥寺の花供養。
仏生会に花御堂を作って、仏に供養することを「花供養(はなくよう)」と言うようです。
境内の石のベンチ。
桜吹雪が舞い、腰掛の座面にも桜の花びらが散っていました。
私はまだ、東大寺の観相窓から覗く大仏様を拝んだことがありません。
飛鳥寺に観相窓はありませんが、建物の外から大仏を拝するのは初めてです。たまにはこういう経験もいいですね。
普段なら4月8日は仕事で忙しい日です。
自粛休館を決定し、ほんの少しだけ外出させて頂きました。疫病退散の願いを飛鳥大仏にも届けます。
木目の綺麗な花御堂。
誕生仏と飛鳥大仏が重なる、貴重な一日です。
仏像に香水(こうずい)を注ぎかける灌仏(かんぶつ)。
水盤に安置されたお釈迦様も、心なしか生き生きとしておられます。
「飛鳥大佛」と記す石標。
日本仏教の黎明期を支えたお寺です。現在の境内はそう広くありませんが、周辺には入鹿の首塚、甘樫丘、飛鳥坐神社などの観光名所も控えています。
飛鳥寺本堂を望みます。
芝桜や菜の花も春を謳歌していました。
お釈迦様の生誕を祝う飛鳥寺の花会式。毎年決まって4月8日に行われる行事ですので、ご興味をお持ちの方は是非お伺い下さい。