舌で繋がる今昔!古代食のニレ粉と醤酢

奈良県ビジターズビューロー企画・監修のウォーキングツアー。

この度、9月半ばに催される『大和名所図会で巡る万葉の故地』の会食会場にお選び頂きました。万葉集に出てくる食材を使った昼食を依頼され、幾つかの試作品を作ってみました。

ニレ粉

ニレ粉。

ニレ粉とは楡(にれ)の内皮を干して臼で粉にし、食用としたものです。

講師役で参加される奈良県立万葉文化館の主任技師の方からこの話をお伺いした時、えっ!?樹皮なんて食べることができるの?と半信半疑でした。

スポンサードリンク

ニレ粉の香の物&万葉集に詠われた醤酢(ひしおす)

楡(にれ)は樹皮を剥ぐと、ヌルヌルするようです。

楡(にれ)の名前も、「滑れ(ぬれ)」に由来するのだとか・・・試作前の段階ではヌメヌメした漬物になるのかと思いきや、さほどでもありませんでした。

ニレ粉

これがニレ粉です。

楡は英語で elm, その樹皮は bark と翻訳されます。商品名にもありますが、” Slippery なエルム・バーク ” というわけですね。開封すると、樹皮ならではの独特な香りがしました。

にれ大根の香の物

青い皿に盛ってあるのがニレ粉の漬物です。

今回は大根で作ってみました。

文献上では蕪を使っているようですが、季節的に入荷が間に合わず大根で代用することになりました。とは言え、大根も「オオネ」として奈良時代には食されていたようです。

万葉集には楡と蟹の漬物が見られます。

木簡によると、備中国(びっちゅうのくに)から中男作物(ちゅうなんさくもつ)として楡蟹が納められていました。中男とは17歳から20歳の男子で、租税の一つとして郷土の産物を納めていたようです。

ニレ粉水

ニレ粉を水に浮かべます。

元来、このニレ粉はケーシー療法の一環として販売されています。

このまま10~15分間ほど待ち、グイっと飲み干します。

本番の解説付きウォーキングツアーを前に、奈良県ビジターズビューロー、万葉文化館、地元旅行会社の方々に試食にお越し頂きました。

タイラギ貝

当日に入荷したタイラギ貝。

大きな貝殻が特徴的です。

醤酢と古代ひしおアイオリソース

醤酢(ひしおす)と古代ひしおアイオリソース

左側がアイオリソースです。

スペイン料理でよく使われるソースですが、古代の調味料にもよく合います。

卵黄と油で乳化させることにより、さらなるコクが生まれています。ところで、食べ物の味を表現する際によく使われる「こく」という言葉ですが、実は穀物の熟したことを表しています。中国で熟した穀物のことを「酷」と表現するようです。コクの語源にもそんな由来があったのですね。

醤酢(ひしおす)は古代人に最も愛された味だと言われています。

万葉集にも ”ひしおす” を絶賛する記述が見られます。ニンニクの野蒜(のびる)を合わせた「鯛の醤酢和え」とも言うべき料理で、万葉人たちの舌を満足させていました。

醤酢(ひしほす)に 蒜(ひる)搗(つ)き合(か)てて 鯛願ふ われにな見えそ 水葱(なぎ)の羹(あつもの)

不味い水葱の羹と対比させるように、美味しいものの代表格として「鯛の醤酢和え」が挙げられています。

蘇の蜂梅

蘇の蜂梅。

「古代のチーズ」とも称される蘇を使ったデザートです。

何を美味しいと感じるのか?

好みは千差万別ですが、少なくとも滋味あふれる古代の食材は現代にも通じるものではないでしょうか。