仏像オンパレードの奈良国立博物館。
特別展示『奈良博三昧』において、平安時代の重要文化財・如意輪観音菩薩坐像を見て来ました。あらゆる願いを叶える如意宝珠と、煩悩を砕く輪宝(りんぽう)を手にするオーソドックスなスタイルの如意輪観音です。
平安時代(9~10世紀)の密教仏です。
なまめかしいお姿の多い如意輪観音の中にあって、比較的質実剛健といった趣ですね。宝冠を頭に戴く六臂(ろっぴ;6本の手)の異形です。十一面観音や千手観音もそうですが、異形の観音様を前にすると、思わず背筋が伸びます。
頬杖する思惟の観音
如意輪観音は福と富をもたらすようです。
右手の一手で頬杖し、左手の一手はバランスを取るために地面に着いています。
奈良博展示の如意輪観音をよく見てみると、右手に宝珠、左手には輪宝を持っています。それぞれ残りの手も興味深いですね。親指と人差し指で輪っかを作り、何かを手にしていたようです。おそらく右手に念珠、左手には蓮華を持っていたものと思われます。
JR奈良駅西口。
駅の周りにはホテルが建ち並び、再開発が進められています。
立て膝をし、頬に手を当てています。
悟りきった姿ではなく、どこか人間っぽいところに惹かれますね。歴史的、美術的価値の高そうな掛け軸も数多く展示されていました。
両足の裏を合わせます。
煩悩を砕くという輪宝。人差し指の上にちょこんと載せているのが可愛く映ります。如意輪観音が素晴らしいのは、曲線美の他にもこの脱力感が挙げられるのでしょう。
左の一手を地に着き、体を支えています。
”右立て膝、左手着き”のスタイルはほぼ共通しています。
様々な角度から見学できるのはいいですね。
遠く平安時代から今に至るまで、悠久の時を刻み続けます。
多くの仏像に囲まれるひと時。
観音菩薩は如来よりも私たち衆生に近い存在です。困った人がいたら、少しでも早く駆け付けるために足を半歩踏み出している姿もよく見かけます。この立て膝もまた、次の瞬間に立ち上がるための準備なのでしょうか。
救いの手を差し伸べるには、2本よりも6本、さらには1,000本あった方がいいでしょう。
より手広くお慈悲を施すため、色々思案しておられる如意輪観音様。柔らかい線の中にも、一本貫かれた強い思いを感じます。