宝塔とは、釈迦の骨である仏舎利を納める塔のこと。
菩薩や天部の持ち物として知られますが、仁和寺中門の多聞天立像の左手に宝塔が見られました。五重塔の一番上の層を思わせる宝塔。
お寿司のシャリの語源は、仏舎利にあります。ツヤのある美味しそうなシャリを見ると、日本人なら誰しも有り難い気持ちになるのではないでしょうか。お釈迦様の象徴である舎利を納めた宝塔は、仏敵に対するお守りとしては何よりも強力であるに違いありません。
仁和寺中門の左側に立つ多聞天。
右手には槍状の武器である戟(げき)を持ちます。四天王の一角である多聞天は、北方を守護する天部の仏神です。四天王の中では唯一単独で祀られることもある仏像として知られます。単独で祀られる場合は、毘沙門天という名前で呼ばれていますね。
仁和寺仏像と仏舎利を納める五重塔
戦いのイメージが強い神様ですが、福徳神としても広く慕われています。
重要文化財に指定される仁和寺中門。
きぬかけの路沿いに建つ仁王門から真っすぐ北へ向かうと、寛永年間に再興された朱色の中門が見えてきます。仁王門から中門まで歩くのにも結構な距離があり、仁和寺の寺域の広さが窺い知れます。
多聞天に踏み付けられる邪鬼。
邪鬼の前にも、名の知れぬ仏像が中門を守護しています。下敷きになった邪鬼はどこか滑稽ですらあります。あなたもこうなるよ、という一種の「見せしめ」のようにも感じられますね(笑)
仁和寺の中門を抜けると、左側に御室桜が植えられています。
丈が低く、開花時期が遅いことで知られる御室桜。満開の時期に来てみたいものだなと思います。仁和寺の御室桜。名所案内では必ずと言っていいほど紹介される、京都観光の定番です。
中門向かって右側に立つ持国天。
「国を支える者」を意味する持国天は、東の方角を守護する仏神です。
仁和寺中門の持国天立像も、手に戟を持って威嚇しています。お寺の本堂の中では、ご本尊様の右手前におられる持国天。続いて左手前が増長天、左奥には広目天、右奥には多聞天が陣取ります。仏堂の中ではそのような位置関係ですが、こちらの中門では東に持国天、西に多聞天が立っています。
持国天立像の足元にも、ユーモラスな邪鬼の姿が見られます。
長い年月に渡って守り続けられてきた仏の世界。四天王の存在無くしては、成し得られなかったことなのかもしれませんね。こんな言い方をしては失礼に当たるのかもしれませんが、番犬的な存在感を感じさせます。
けたたましく吠える犬が居る家には、盗人も盗みに入りづらいものです。
中門を入ってしばらく進むと、右手に五重塔が見えてきます。
卒塔婆にも通じる五重塔。
仏舎利を納める場所として君臨する五重塔は、お寺のシンボル的存在でもあります。宝塔を手にする中門の多聞天が、この上なく心強い存在に思えてきました。