日の出の時間も早まり、少しずつ春めいて参りました。
細胞を目覚めさせる苦味が持ち味の春野菜も出回り始めます。結婚式の食事会に、春を感じさせる菜の花とおからの稲荷寿司をお出し致しました。
菜の花とおからの稲荷寿司。
いかなご、胡麻、菜の花、黒米、スナップえんどうをおからでまとめ、出汁の味を含ませた薄揚げの中に入れます。紫色の大根と蕗の薹を添えて盛り付けます。
切らずの別名を持つおから
おからと言えば卯の花、卯の花と言えば切らずです。
「切らず」とは面白い名前ですが、食材を切らずに使えることに由来しています。卯の花は健康にも良く、包丁要らずの便利な食材です。「おから」と表現してしまうと、なんだか「空(から)」に通じているような気がして参ります。そんなことも手伝ってか、「切らず」という名前が定着しているわけですね。
大豆を水と共に摩砕した呉から、豆乳を絞った絞りかすが卯の花(切らず、おから、雪花菜)です。同じ卯の花でも、きめが細かいものほど上質とされます。
卯の花は油との相性も良く、パラパラに煎って和え物にすることもよくあります。
煎って水分を飛ばした卯の花に、いかなごを加え、寿司飯を作るときの要領で味付けをします。最後にひねり胡麻を加え、粗熱が取れてからミキサーにかけたスナップえんどうを流し入れます。菜の花を散らして、春らしい演出を施します。
こちらは椎茸団子。
肉だねの中には、片栗粉をまぶした微塵切りの玉ねぎが入っています。衣に三輪そうめんを使い、一度揚げてから出汁味を含ませています。油で炒めた白菜と一緒に煮ることによって、白菜の旨味も吸い込んでいます。
菜の花の目利きとしては、三分咲きまでの蕾の硬いものがおすすめです。
花が開いてしまっている菜の花は、育ちすぎで硬い傾向があります。茎がしっかりしていて切り口の瑞々しいものを選びましょう。ほろ苦さが持ち味ですので、茹ですぎには注意が必要です。さっと火を通したらすぐに冷水に取ります。色止めをして、鮮やかな緑色を生かすことが大切です。
スナップえんどうの甘味もあって、美味しい稲荷寿司に仕上がっています。
さやえんどうと実えんどうの中間種のスナップえんどう。さやごと食べられるのが特徴で、春から初夏にかけて旬を迎えます。
大和茶のチョコブラウニー。
珍しい白いイチゴも入荷していたので、チョコブラウニーに添えて供します。
好みの食材を入れることができるのがチョコブラウニーの面白いところでもあります。定番のクルミに、蜜柑の皮を入れて160度のオーブンで焼き上げました。
季節は二十四節気の雨水初候から、次候の霞始靆(かすみはじめてたなびく)へと移っていきます。文字通り2月の末頃は霞がたなびき始め、いよいよ本格的な春の到来を予感させます。