二十四節気の大寒(だいかん)における末候を鶏始乳(にわとりはじめてにゅうす)と言います。候の意味は、鶏が卵を産み始める頃を指します。新暦でいえば、1月30日~2月3日頃に当たります。
石上神宮の鶏。
社務所前に張られた結界の角に佇みます。旧暦における七十二候(しちじゅうにこう)の最後に当たるのが「鶏始乳」とされます。日の長い夏場にたくさんの卵を産む鶏ですが、その産み始めの時期が大寒の最終章に当たります。
節分の時期とも重なる鶏始乳
2月3日といえば節分の豆まきです。
豆撒きの舞台から福豆が撒かれる行事は全国各地に見られますが、鶏にまつわる七十二候を思えば、撒かれる豆が鶏の卵にも見えてきます(笑)
福笹を求めて数多くの参拝客が詰め掛けます。
鶏は昔から人々に馴染み深い動物でした。鶏の古名は「庭つ鳥(にわつとり)」であり、その名の通り庭をイメージさせる身近な動物です。その昔、清涼殿の南階では鶏合(にわとりあわせ)と言って闘鶏が行われていました。京都祇園会の山鉾の一つにも、山車に鶏の形が取り付けられた鶏鉾(にわとりぼこ)があります。
高タンパク低脂肪の食材として、鶏のささみ肉は重宝されています。人間の生活とは切っても切れない関係にある鶏だけに、卵を産み始める時期と節分が重なっているのは偶然ではないような気が致します。
仏教では殺生を禁じます。
歴史をさかのぼれば、676年に牛や馬、鶏の肉を食べることが禁じられました。鶏の卵を食用とすることも禁じられたため、江戸時代になるまで鶏は食べられることがありませんでした。
ニュースの話題にもよく取り上げられますが、卵の値段は変わらないことで知られます。
物価変動の影響を受けずに、長らく日本の食卓を潤してきました。品種改良も繰り返され、採卵の頻度も増していっているようです。しかしながら、鶏は毎日卵を産むことはありません。数日連続で産んだら一日休むというサイクルを繰り返します。
アルコール好きの人が休肝日を設けるように、鶏も適度に休みながら生産活動を続けます。
平安時代に宮中で行われていた「大晦日の追儺」に由来する豆撒き。
まだまだ寒い中にあって春を感じさせる行事です。全国各地の学校や神社に於いて、人々が豆撒きに興じている間にも、私たちの生活のパートナーである鶏は卵を産み始めているのです。二十四節気「大寒」の末候に当たる、七十二候の鶏始乳(にわとりはじめてにゅうす)という言葉をこの機会に覚えておきましょう。