あじさいで人気の矢田寺。
その裏山には遍路道が広がります。
遍路道といえば、菅笠をかぶって白装束姿で歩くお遍路さんを想像します。矢田寺遍路道は四国八十八箇所霊場を模したミニ霊場であり、普段着のままで歩いておられる矢田寺参詣客をよく見掛けます。
矢田寺遍路道。
本堂の左手からぐるっと裏山を回るウォーキングコースが整備されていました。
弘法大師空海と道連れ
大和平野を一望できる遍路道として人気を呼んでいます。
大正時代に作られた遍路道ですが、一時は歩く人も少なく、長い歴史の中で荒廃を余儀なくされていました。保存会の方々によって蘇った矢田寺遍路道。矢田寺参拝の際には、時間が許せば是非歩いてみたいものです。
矢田寺の紫陽花。
綺麗なあじさいの花を見ていると、日本列島に毎年梅雨が到来することを素直に喜べます。移ろいゆく紫陽花の彩りに、人の世のはかなさが重なります。
「お大師様と二人づれ」と書かれたプレートを見つけました。
幾多の困難が待ち受ける長い道のりも、弘法大師空海様と共にあると思えば心強いものです。
四国八十八箇所霊場巡りにおいては、同行二人(どうぎょうににん)という言葉が広く知られます。
矢田寺遍路道の距離は一周4.5㎞。所要時間はおよそ1時間30分~2時間とされます。遍路道の中間地点には休憩小屋も用意されていますので、初心者の方でも安心して歩けるコースではないかと思われます。
弘法大師八十八ヶ所霊場の石標。
矢田寺遍路道には無数の石仏が並んでいます。
紫陽花と舎利堂の風景。
どこかの本で読んだフレーズが蘇ります。
「私の前に道は無い。私の後ろに道は広がる」。そんな意味合いの言葉でしたが、八方塞がりの青春時代にはとても印象に残る言葉であったことを思い出します。先駆者たらんパイオニア精神にあふれていて、当時の私の座右の銘にもなりました。
目の前に広がる荒野。
目の当たりにして立ちすくんでしまいそうになるところを、勇気を振り絞って開拓していく。その気概も必要ですが、長い道程の途中にはくじけそうになることも度々あるはずです。そんな時に、同行二人が心強い支えになるのではないでしょうか。
矢田寺遍路道に掛かっていた同行二人のプレート。
「人」という漢字の成り立ちが、人同士が支え合っている姿に由来しているとよく言われます。確かにそういうものなのかもしれません。
紫陽花と共に矢田寺を象徴するお地蔵様。
境内の至る所にお地蔵さんの姿が見られます。
四国まで足を運べない方々のために作られたであろう矢田寺遍路道。
お遍路の疑似体験が出来る山道は、ふらっと立ち寄った矢田寺参詣客をも快く出迎えてくれます。健康増進をテーマに高齢者のウォーキングコースとしても定着していくのではないでしょうか。
世界遺産と書かれていますね。
お寺の裏山に広がる遍路道という点では、長岳寺の裏山にも遍路道が通っています。
長岳寺にも多数の石仏が見られ、矢田寺との共通点が感じられます。長岳寺も矢田寺もどちらも真言宗に属するお寺ですよね。
矢田寺本堂。
地蔵菩薩の根本道場として栄える矢田寺ですが、元々の本尊は十一面観音だったようです。現在は藤原時代初期の彩色を施された地蔵菩薩立像が「矢田地蔵」と称され、人々から篤い信仰を集めています。
どこまでも、どこまでも弘法大師様と共に歩く。
矢田寺遍路道は、自分自身を再確認する場所としてもおすすめです。黙々と歩みを進めて行く中で、「自分」というのは自然の分身である、そんなことを気付かせてくれるのかもしれません。