個室宴会の予約が入っていた日(2013年度の過去記事です)。
滅多にお目にかかれないタカノハダイが入荷しました。
その磯臭さ故、敬遠されがちな鷹羽鯛(たかのはだい)ではありますが、暑い夏も過ぎ去ったことですし、徐々に味も良くなってくる頃だろうと思い“お造り”にしてみることにしました。
タカノハダイ。
分厚い唇をしていますよね(笑)実に愛嬌のある顔です。
鷹の羽を思わせる模様!紋付袴の鷹の羽紋
「磯臭い」という表現。
色んな見方があるでしょうね。料理においては「アクも味の内」と申します。少々のクセは、素材本来の味であって疎外されるものではない。そんな風にもとれます。タカノハダイが磯臭いと言っても、イスズミほどの臭味は感じませんでした。
体表の縞模様が鷹の羽に似ていることから、鷹羽鯛(たかのはだい)と命名されています。
鷹の羽と言えば、家紋の世界ではお馴染みですよね。
阿蘇神社の御神紋で、その氏子から広まった鷹の羽紋。
かの有名な浅野内匠頭(たくみのかみ)の御紋としても知られます。当館で行われる結婚式の和装ロケーション撮影においても、新郎様がお召しになられている紋付き袴に鷹の羽紋を幾度か拝見したことがあります。
大正楼中庭に咲くヒガンバナ。
タカノハダイの旬は秋から春にかけてと言われます。
夏場のタカノハダイはその磯臭さから食用には向きませんが、冬になると食通をうならせるほどの味わいが感じられることもあります。スズキ目タカノハダイ科に属する魚ですから、ちょうどスズキのように洗いにしてみるのもいいかもしれませんね。
タカノハダイの尾びれ。
鮮やかな白い斑紋が見られます。観賞魚にでもなりそうなぐらいに綺麗な尾っぽです。
こちらがタカノハダイのお造り。
見た目は鯛とそう変わらないのではないでしょうか。
三枚おろしにしていて気付いたのですが、その上質で繊維質の白身には多少の脂も感じられ、食べる前から美味しそうな雰囲気を醸します。中骨もずいぶん太くてしっかししています。骨抜きでがっちりつかんでグイッと引っ張り出します。
浅い岩礁地帯に生息するタカノハダイですが、イサギに比べて身も引き締まっています。多少磯臭い気もしないではありませんが、それはそれで海の香りがして美味しいものです。
下がタカノハダイで、上はベラ科のイラ(伊良)です。
味噌漬けにすると美味しいイラですが、別名をテスとも言います。
タカノハダイをよく観察してみると、頭部にかけて背中が異様に盛り上がっているのが分かります。この部位が特に磯臭いと言われますが、タカノハダイをタカノハダイたらしめている他には見られないオリジナリティでしょう。
飛鳥の吉備姫王墓。
吉備姫王墓の領域内には、ミステリアスな石造物として人気の猿石があります。
タカノハダイの縞模様。
タカノハダイの味を体験してみて言えることは、満更捨てたもののではないということでしょうか。
海の資源の枯渇が叫ばれて久しい昨今、あらゆる種類の魚を食べてみることの大切さを痛感した次第です。タカノハダイの消費が、回りまわってエコにつながっていくものなのかもしれません。