石上神宮を山の辺の道の起点にする人も多いと思います。
南北に連なる山の辺の道は、石上神宮よりもさらに北へ、奈良市内まで通じていることをご存知でしょうか。重文の楼門から東へ、披露宴の催される長生殿の横を通って進むと、左手に金色に輝く大イチョウが見えて参ります。
石上神宮の大銀杏。
奈良へと通じる山の辺の道沿いに立つ大イチョウです。
石上神宮社叢!撤饌にもなる縁起物
高さ約30m、幹周り3.26m、樹齢約300年の巨木。
槻の木と同じく、大木に育つことの多い銀杏の木・・・その末広がりの葉っぱの形から、縁起物としても用いられます。私たち料理人の間では、大根を銀杏の形に切った銀杏大根を秋の会席料理に添えることが度々あります。
昔の武家における男性の髪結いで、髷(まげ)の刷毛先を銀杏の葉形に大きく広げた結い方を大銀杏(おおいちょう)と言いました。
大相撲の世界でも、力士の髷を「大銀杏を結う」と表現しますよね。遠藤や逸ノ城のように、かつてスピード出世を果たした力士の髷には大銀杏が見られませんでした。十分な髪の長さに達しないと、どうやら大銀杏は結えないようです。
なんだか縁起の良さを感じさせる大イチョウ。
秋の石上神宮参拝の際には、是非見ておきたい見所の一つですね。
石上神宮の社号標。
紅葉シーズンはやっぱりいいですね。
赤や黄に色付いた葉が、石上神宮の杜を覆い尽くします。
広い石上神宮の敷地内ですが、平成7年には境内地の内約13万平方米が石上神宮社叢として奈良県の天然記念物に指定されています。
社号標を写真に撮ろうとすると、社号標の下の渠に名物の鶏が入ってきました(笑) 木登りが得意な石上神宮の鶏ですが、こんな所にも顔を出すことがあるんですね。その行動範囲の広さにちょっぴり驚きます。
摂社出雲建雄神社拝殿。
元来は、石上神宮南にあった内山永久寺鎮守の住吉社の拝殿でしたが、大正3年に現在地に移築されています。大寺院として知られた内山永久寺の遺構として、大変貴重なもので国宝に指定されています。
石上神宮の鏡池の水面に、綺麗な紅葉が映し出されていました。
神さぶる境内に、幻想的な紅葉が重なります。桜井市の紅葉の名所・等彌神社境内にも、池に映し出される「さかさモミジ」が見られます。こういうのをぼんやり眺めていると、この一年間の出来事が走馬燈のように駆け巡ります。
銀杏は中国原産の木です。
仏教伝来と共に渡来し、神社や寺に植えられるようになったと言われます。
葉っぱの形が鴨の脚にも似ているところから、中国音で鴨脚(ヤーチャオ)と発音されました。銀杏(いちょう)という言葉の語源は、中国音のヤーチャオに由来しているのです。奈良の歴史散策では、中国や朝鮮半島など、大陸からの影響を随所に見ることができますが、この銀杏の木にも大陸由来のものを見ることが出来るというわけですね。
石上神宮の大イチョウは、やはりスケールが違います。
JR天理駅の2階プラットホームからも望むことができます。プラットホームから東方に目をやれば、金色に輝く大イチョウが見えるのです。
踏みつけると臭い銀杏の種・銀杏ですが、12月になると、石上神宮の撤饌として社頭で分けられます。
銀杏の臭いは小学生時代の記憶を呼び覚まします。
三輪小学校への通学路に、かつて銀杏の木が生えていました。JR三輪駅前にあったその木は、今はもうありません。秋に彩られる銀杏は当時の記憶と密接に結び付いています。