いい感じの脂が乗っています!
スズキ目クロタチカマス科の籠魳(かごかます)。沖カマス、タヌキなどの地方名を持つ深海魚で、全身に回る脂が持ち味です。鮮魚で入荷することは稀で、そのチャンスを逃すまいと姿造りにしてみました。
カゴカマスの姿造り。
やはりこの魚は、シルバーの皮を生かしてあげなくてはなりません。皮を引いてしまっては、旨味が損なわれます。三枚おろしでその身質に触れ、これは刺身でいけると直感しました。
鋭い歯のカゴカマス!焼霜造りの旨味
深海魚のイメージを低下させる骨。
骨だらけで処理が大変、骨が当たって食べにくい等々、深海魚にはありがちな骨の問題。確かにカゴカマスにも、皮に向って細い骨があります。普通の魚には見られない骨です。銀色に輝く体の表面を見ると、骨が浮き上がって見えます。なぜこんな所に?と不思議に思いました。
でも、ご安心下さい。
同じクロタチカマス科のクロシビカマスに比べれば、その骨は大して気になりません。
骨切り作業が必須のクロシビカマスでしたが、カゴカマスは骨切り無しでもOKです。その程度の骨ですので、あまり気にしない方がいいでしょう。どうしても気掛かりであれば、引っ掛かる箇所だけ数本抜いてあげましょう。
カゴカマスの鋭い歯!
ナワキリ(縄切り)の異名を持つクロシビカマスにも匹敵する歯ですね。
カゴカマスの焼霜造り。
銀皮の上からバーナーでさっと炙り、氷水に取ります。水分を拭き取って平造りとそぎ造りにしてみました。竹胡瓜と菊花を添えて供します。
大きな口を開けて盛り付けます。
そもそもカマスの名前の由来は、日本書紀などにも記載のある「叺(かます)」という袋にあるようです。藁筵(わらむしろ)を二つ折りにし、袋状にした入れ物のことを叺(かます)と言います。口の大きな袋だったようで、大口のカマスにも通じます。
バットに並ぶ一番下の魚がカゴカマスです。
側線だと思いますが、途中で折れ曲がっていますね。
カゴカマスの薄皮。
乳白色の薄い皮が体表を覆います。鱗はほとんど気になりませんでしたが、この薄皮だけは剥いた方がいいでしょう。
こんな感じで張り付いています。
薄皮は手で簡単に剥けます。途中で切れることもありますが、綺麗に全部剥がします。ちなみに皮を引いて料理するのであれば、薄皮を剥く必要も無いかもしれません。
中庭を背景にパチリ。
旨い脂が堪能できる魚です。
南半球へ行くと、カゴカマスと同属の「ミナミカゴカマス」という魚がいるようです。体長1mを超える魚体で、オーストラリアでは人気の魚のようです。比較的暖かい海を好むカゴカマスですが、温暖化の影響で見る機会も増えていきそうです。
あまり焼き過ぎると皮が取れてしまいます。
さっと炙る程度でいいでしょう。
やや受け口でしょうか。
吻に向けて”流線形”の美しいカゴカマス。胴体はさほどでもありませんが、顔はシュッとしていますね。
盛り付ける前に、爪楊枝などで口を開いた状態に保ちます。
これだけの歯を見せられたら、開かずにはおられません。魚の特徴を強調してあげることも、盛り付けのヒントになります。
胡瓜でさざ波を表し、お皿の中に”大海”を再現します。
ちっぽけな空間ですが、そこに色んなものを集約していく作業は”盆栽”にも似ています。もちろん、主役の魚あってこその姿盛りですね。