還暦祝いのご予約当日、赤い色でおなじみのチビキが入荷致しました。
ワインレッドの濃い身は比較的柔らかく、歯が気になり出す長寿祝いのお客様にもおすすめです。還暦祝いの献立にビーツの煮物をお出ししたこともありましたが、やはり赤色は慶事の象徴でもあり、お祝いの席を華やかに彩ります。
スズキ目ハチビキ科に属するチビキ。
標準和名を葉血引(ハチビキ)と言います。
チビキの身が血の色を連想させることに因みます。
縁起の良い末広がりの尾びれ
チビキは縁起担ぎの魚です。
その色合いもさることながら、末広がりの尾びれが縁起の良さを感じさせます。
紡錘形のシュッとした体型をしています。
両端が細く、真ん中にかけてでっぷりと身が付きます。どこか鯖を思わせる体型からか、関東や駿河湾では赤鯖(アカサバ)とも呼ばれています。
チビキの刺身。
今回は新鮮なチビキが入手できたので、迷わず刺身にしてみました。
見事なワインレッドを目にすると、捌いている私の血も騒ぎ出します(笑)
チビキの尾びれ。
めでたく八の字を描いています。「末広がりの八」はお祝いの席にぴったりですね。
目を凝らしてよく見ると、尾びれの付け根に殿上眉(てんじょうまゆ)のような文様が見えます。平安時代のいわゆる「まろ眉」のことですが、引き眉(ひきまゆ)の後に眉の上に墨で描いていたアレです(笑)
チビキのポワレ ヤンニョム仕立て。
ニラや三つ葉を使った自家製のヤンニョムが手元にあったので、チビキのポワレの上に掛けてみました。やはり新鮮なチビキはポワレにしても美味しいですね。
地方によってはアカトンボやアカムツといった呼び名もあるようです。
いずれもチビキを特徴づける赤い色に由来しています。
つい先日、焼魚用に購入した平アジの尾びれも綺麗な末広がりでしたが、チビキの末広がりにはオマケとして赤い色が付いてきます。古来よりお祝いにはお赤飯を炊く習慣がありますが、赤い色には幸せを呼ぶパワーが備わっているのでしょうか。
魔除けの赤は狛犬のよだれかけ等でも実証済みですよね。
チビキの頭を二つに割る梨割り。
下あごが上あごよりも出ているのが分かります。
俎板の上のチビキが真っ二つに割られる瞬間を待ちます。
チビキの三枚おろし。
腹、背、背、腹の手順で進める三枚おろし。腹、背の二番目の処理を終えて、捌いた身をひっくり返します。とても濃い赤色をしています。神社などでよく目にする明るい感じの朱色とは違い、まさしく血を思わせる深紅の色合いです。
上から順に高級魚のイトヨリ、チビキ、くさやで知られるムロアジを並べてみます。
チビキとムロアジはどちらも紡錘形で、よく似た体型をしています。
チビキの腹びれ。
腹びれも見事に赤味がかっていますね。葉血引(はちびき)という名前は、木の葉を連想させるチビキの体型に因るものなのでしょうか。
チビキとムロアジの刺身。
61歳(数え年)の還暦に始まり、70歳の古稀、77歳の喜寿、88歳の米寿と続いていく長寿のお祝い。節目の年に心も新たに、大神神社へお参りされることをおすすめ致します。
88歳の米寿で思い出しましたが、米作りには八十八の手間がかかると言われます。
末広がり、無限大を表す八が二つ並ぶ88。
大神神社でも、11月23日には新嘗祭が執り行われますが、数字の八が持つ意味を噛み締めながら、これからも感謝を込めて一年一年を歩んで行こうと思います。