龍王山の北東方向に広がる天理市藤井町(ふじいちょう)。
天理ダムから笠山三宝荒神社へ抜けて行く途中、藤井町の集落を通ります。周辺エリアの苣原(ちしゃわら)町や仁興(にごう)町にも勧請縄が見られ、山間集落ならではの慣習を思わせます。
藤井町の勧請縄。
三本の縄が吊るされ、そこに三本の樒が横渡しにされます。ちょうど「田」の文字が浮かび上がり、五穀豊穣や厄除の願いが込められます。通常は樒が使われますが、これはひょっとすると杉なのかもしれませんね。
名阪国道の福住ICから国道25号線を南下し、天理ダムを経由して笠山荒神社方面へ向かいます。その途中で、道路に渡された勧請縄に出くわすことになります。
農業集落排水事業・藤井地区処理場近くの勧請縄
山間の道を登って行き、ほぼピークポイントに差し掛かったところで勧請縄が見えて参りました。
勧請縄と言えば、明日香村稲渕の勧請綱掛神事がよく知られますが、奈良県内には数多くの勧請縄が今も現役で頑張っています。高家の勧請縄も記憶に新しいところですね。
天理市藤井町の勧請縄。
道路脇を川が流れています。
農業集落排水事業 藤井地区処理場。
この処理場の手前に勧請縄が掛かっていました。
“田の字” の上に、三角屋根が付いているような格好ですね。
樒(しきみ)は榊とよく間違えられますが、仏前に供えられているのが樒です。一方の榊は神前ですね。樒の実には猛毒があり、”悪しき実” が転じて ”しきみ” になったとする説があります。毒は同時に特効薬にもなります。
邪悪なものを寄せ付けない樒。
墓地などにもよく見られますが、その効果を狙ったものではないでしょうか。
これはもう集落の守り神ですね。
村の入口付近でブロック!
峠に立つ地蔵石仏などにも同じような意味がありますが、やはり勧請縄の方が強力に映ります。端から端へと掛け渡されるわけですからね、侵入する隙間がどこにも見当たりません。
音を立てて川の水が流れます。
神社にお参りする時も鈴を鳴らしますが、「音」は神様を呼ぶ合図にもなります。ここは場所的にも申し分ないような気がします。
いいですね。
こういう日本の原風景はいつまでも残していってもらいたいと思います。