天理市福住町下入田(しもいりた)の阿弥陀石仏。
名阪国道の福住ICを降りて北へ向かいます。程なく右手ガードレールの向こうに石仏が見えて参りました。応長元年(1311)の刻銘があり、鎌倉時代後期の阿弥陀石仏と伝わります。
下入田の阿弥陀石仏。
自然石を巧みに彫り窪めた傑作です。笠石を頭上に、その中央には丸い石が乗っかります。どこか漢字の部首である「亠(なべぶた)」を思わせますね。絶妙にバランスが取られています。
洪水の浸水が名前の由来
ところで、なぜこの阿弥陀石仏を「尻冷やしさん」と呼ぶのでしょうか。
理由はこうです。
今でも阿弥陀石仏の傍らにはせせらぎの音が聞こえますが、かつての阿弥陀石仏も川のすぐ傍に立っていました。洪水の難に遭い、石仏のお尻が水に浸かってしまったことから「尻冷やしさん」と呼ばれるようになったようです。
お尻の部分まで水に浸かったということは、阿弥陀様が立つ蓮華座などもすっかり水没したのでしょう。当時の情景が蘇りますね。
国道25号線沿いのガードレールの奥にひっそりと佇みます。
このまま真っ直ぐ進めば、浄土に鎮座する氷室神社へアクセスします。
鍋の蓋に似ているから「亠(なべぶた)」です。
あるいは文鎮の形に似ていることから、卦算冠(けいさんかんむり)と言うこともあるようです。易占いの算木ですね。ちょこんと球形の石が乗り、愛嬌を感じさせます。
軸石と笠石の接合部には、接着剤のようなものが充填されていますね。
こういうのも ”漆喰” と言うのでしょうか。
蓮華座の上にお立ちになられています。
線刻も綺麗に残っていますね。
割と分厚い石で出来ています。
笠石も含めて高さは160cmで、花崗岩製の阿弥陀石仏とされます。
背後に回ります。
軸と笠の接合部が露わになっています。
野の花を手前に写し込みます。
笠石仏は雪が降ると風情が出ます。
福住地区のまちづくりマップにも、積雪時の尻冷やしさんが紹介されていました。笠の上と阿弥陀さんの足元に雪が降り積もり、独特の風情を醸し出します。
北側から阿弥陀石仏を見ます。
今は国道の傍らに立ち、昔のような風情は失われているのかもしれません。
ちょうど福住町の入口に位置し、名阪国道から降りて来たドライバーたちを出迎えます。時代は変われど、ポイントになる場所に立ち続けていらっしゃることに変わりはないようです。
福住エリアには、観光スポットとしてもおすすめできる石仏が複数存在しています。
亡者の審判を行う十王仏、病気平癒・子宝祈願の泥かけ地蔵、七曲り峠の受け取り地蔵、永照寺婆羅門杉前の不動石仏、上山田のクサ地蔵等々、見所溢れる石仏の宝庫となっています。
天理市福住町の観光は氷室神社のみにあらず、石仏めぐりもオススメ致します。