大神神社のおんだ祭に行って参りました。
奈良県内だけでも60ヶ所以上で催されるおんだ祭。飛鳥坐神社のおんだ祭は見学したことがあるのですが、大神神社は実は初めてでした。灯台下暗しでしたね、こんなにユーモラスで面白い祭事だったとは!是非皆さんにもおすすめしたいと思います。
大きなおにぎりを両手に持つ田作男(たづくりおとこ)。
押しも押されもせぬ、おんだ祭の主役です。両手に物を持つと・・・と前置きして、昨年末に大流行したPPAPが始まりました(笑) 古式ゆかしい神事ではありますが、俗世間の流行も取り入れるようです。大神神社の職員の方だと思われますが、優れたタレント性を感じさせます。
籾種が撒かれる五穀豊穣祈願のお祭り
初春に催されるおんだ祭。
今回参加させてもらったことで、ご利益の一端に授かれたのではないかと思います。
田作男が撒く籾種を、好運にも頭から浴びることができたのです。意図はしていなかったのですが、位置取りが功を奏しました。籾種が撒かれることすら知らなかったものの、何でも経験してみるものですね。
大神神社拝殿前。
豊作を祈念するおんだ祭。2月6日の午前10時30分から拝殿にて執り行われました。毎年2月6日といえば、三輪の初えびすの本祭当日でもあります。大神神社のおんだ祭の後に、三輪恵比須神社の初市大祭に足を向ける方も多いことでしょう。
大神神社の行事日程。
2月のスケジュールが二の鳥居前に掲げられていました。
おんだ祭当日は、豊年講大祭も併せて斎行されます。巳の神杉前では甘酒の振る舞いもあり、体を温めながらの見学となります。行事表を見ると、前日に行われた卜定祭にも興味が湧きました。来年は是非、2月5日の卜定祭にも足を運んでみようと思います。
頭上から降り注いだ籾種。
旅館に帰って、改めてその有難味を噛み締めます。
おんだ祭では水田作りの所作が面白おかしく演じられます。田んぼが無事に完成すると、田作男が「良い種蒔いて、良い米とれよ」の掛け声と共に籾種を蒔き散らします。籾種の品種はヒノヒカリのようですが、完成した田圃(たんぼ)や参拝者へと勢いよく撒かれます。
赤ちゃんの写真を満面の笑みで見せびらかす田作男。
髭を剃るふりをして鏡に向かった田作男でしたが、なんとその鏡面には赤ちゃんの写真が貼られていました!軽妙なおしゃべりを聞いていると、ひょっとして本当の娘さん?だとすれば、心よりおめでとうございます(^^♪
おんだ祭には子孫繁栄の願いも込められています。これはもう、二重の喜びですね。
鈴神楽を舞う二人の巫女さん。
田作りの所作が終わると、早乙女に扮した巫女さんが苗松を手に田植えの所作を披露します。太鼓の音に合わせて田植えの真似事が始まります。実際に大神神社の御田植祭でも、太鼓の音に合わせてリズムよく苗が植えられます。巫女による田植えの所作が終わると、今度は豊作を祈って鈴神楽が舞われました。
おんだ祭を見学するために家を出て、大神神社に到着したのは10時20分前頃だったでしょうか。
斎館前に整列するご神職の皆さん。
ここは祭典の前に潔斎が行われる場所です。一般参拝客は斎館の中を見ることはできませんが、周囲には厳粛な空気が漂っていました。独特の緊張感ですね。
いよいよご神職方のお出ましです。
これから始まるおんだ祭。粛々と列を成し、拝殿の中へと入って行かれました。
祭典前の田作男。
この位置取りが良かったようです。拝殿向かって右寄りの場所です。
田づくりに精を出した田作男が、しばしの休憩を取る場所にもなっていました。
建築材の端には、黄金に輝く青海波紋が見られます。
その向こうに、”田を耕す牛” が立て掛けられていました。飛鳥坐神社でもそうでしたが、大概は牛のお面を被った人が牛役を担います。しかしながら、大神神社は少し事情が違うようです。牛の形に似せた古木が使われるようです。
こんな感じです。
巧みに牛を操りながら、田を耕していきます。
標柱(しめばしら)の榊。
注連縄(しめなわ)や標柱の「シメ」は「占め」に通じます。
つまり、場所を占めることを意味しています。とある空間に線を引き、別世界とする印です。俗世間と神界を分け隔てる場所に標柱が建ち、注連縄が張られます。榊も「境+木」に由来しているというお話を伺ったことがありますが、ボーダーラインを意識した昔の人を思います。
酒を飲み、おむすびを頬張る田作男
お米は無くてはならないものです。
言わずと知れたニッポンの象徴でもあります。そのお米から作られるお酒やおむすびもおんだ祭に登場しました。豊作を祈る予祝行事ですから、お米がテーマになっているのも頷けますね。
一仕事終え、休憩に入る田作男。
この休憩中の田作男が見所の一つになっています。主役の背後からカメラを回しておられる方もいらっしゃいますね。
大きなやかんを持ち出しました。
中にはお酒が入っているようです。嬉々とした表情がまたイイ(笑)
グイッと飲み干します。
大きな笑いは豊作につながると言いますから、演技にも力が入ります。
ヨッ、名優!
拝殿前には笑いの渦が巻き起こります。
今度はどデカイおにぎりを持ち出しました!
御顔よりも大きいのでは?さぞ握るのも大変だったことでしょう。
私たちはおにぎりのことを「おむすび」と言いますが、この「結ぶ」という言葉にも実に深い意味が隠されています。古代には漢字など存在しませんから、音の発する霊感のようなものが宿っていたのかもしれません。「むす」は「生す(むす)」であり、「蒸す(むす)」に近いニュアンスも含まれていました。我が子のことを息子、娘と言いますが、どちらにも「むす」の音が入っていますよね。そこには、今まで知り得なかった新たな気付きがあります。
両手でおむすびを持ち上げます。
我が子を慈しむように、大切に抱きかかえます。
今度は両手に!
この格好から何が始まるのかと思いきや、いきなりピコ太郎のPPAPが始まりました。おむすびの顔をよく見てみると、間違いなく男性と女性ですね。飛鳥坐神社では天狗とおかめですが、ここは三輪山に抱かれる大神神社。だとすれば、オオモノヌシとイクタマヨリヒメでしょうか。子孫繁栄のお祭りを思わせますね。
縁起物の竹笹を背に、参拝者に語り掛けます。
この会話調のやり取りが、参拝客との距離を縮めていきます。
堂に入った演技です(笑)
柱に掛けられた恵比須面もきっと微笑んでいることでしょう。
頬張った!
大まかな筋書は決められているものと思われますが、とっさのアドリブもあるのかもしれません。
服に付いた籾種。
田作男が拝殿から撒いた籾種を、私の洋服が見事にキャッチしてくれました(笑) 表面がごわごわした冬服であればこその幸運ですね。Tシャツではこうもいきません。
鏡に向かって髭を剃ります。
あれ?本当に髭を剃っているのかどうかはよく分かりません。
鏡を裏返すと、笑っている赤ちゃんの写真が!
してやったりの表情で、カメラの方にもサービスを振り撒きます。
今度は赤ちゃんの写真自体がすり替わっていますね。
こちらが実際に、田作男の娘さんなのでしょうか?ちょっと自慢気(笑)
鍬を手に、神田に見立てた拝殿向拝(こうはい)で一仕事。
蛙の歌を唄いながら、「ゲロゲロゲロゲロ、クワッ(鍬)、クワッ(鍬)、クワッ(鍬)!」と洒落を連発します。ちなみに、その次のめだかの学校では何のオチもありませんでした(笑)
大神神社の御神紋・三本杉がデザインされた扇子を片手に、神田を進み出ます。
左脇に抱えているのが、どうやら籾種のようです。
勢いよく撒かれます!
最前列付近に居た私の真上に籾種が降りかかります。
なんだか全身に浴びたような爽快感!これで今年の無病息災は約束されたようなものです。ありがとうございます、田作男~!
おんだ祭を締め括るシーンでは、きちんと袋入りの籾種も撒かれました。残念ながらその籾種は手にすることが出来ませんでしたが、田作男が手にした裸の籾種を直に受けることが出来たのです。これ以上の幸福があるでしょうか。
今年も一年、大神神社さんにはお世話になりそうです。既に結婚式後の披露宴も16組のご予約を頂いています。平成29年度が幸多き一年となりますように、皆様のご多幸をお祈り申し上げます。