吉本新喜劇などに見られる”お約束”のお笑いネタ。
観劇する側は「待ってました」とばかりに大笑いする定番シーンですね。分かっちゃいるけれど笑ってしまう。筋書き通りのネタを繰り広げることによって、会場全体が笑いの渦に巻き込まれます。そんなステレオタイプの観光スポットを、私たち旅行者も求めているというお話です。
檜原神社の三ツ鳥居。
山の辺の道沿いの別名「三輪鳥居」は、パワースポット巡りの観光客には”お約束”の存在です。
アマテラスが祀られていた三輪山麓の”元伊勢”には、スピリチュアルな空気が満ちています。古代史が好きな方にとっては、ベタな観光スポットと言っていいでしょう。
発見ではなく確認!納得する観光戦略
やっぱりシンボルって大切なんだと思います。
信頼のブランド、歴史に裏打ちされた刻印のようなものが人々を惹き付けます。
全国各地の自治体にも、地元の撮影スポットを探す動きが見られます。絵になる風景や印象的な建造物は探せば色々あると思います。まずは地元民総出で故郷の宝を再発見し、それをPRしていく必要があります。
京都タワーなどは誰もが知る京都のシンボルです。
別に珍しいものではありませんが、京都駅に降り立ったらまずはカメラを向けてしまいます。
条件反射のように京都タワーを撮影するのは、日本人も外国人も同じです。日本を初めて訪れる外国人観光客でさえも、テレビや雑誌、絵葉書などで既に京都タワーの姿をインプットしていることでしょう。にもかかわらず、実際の京都タワーを見たらパチリとしてみたくなるのです。
これは発見ではなく、確認作業なのです。
新車を購入した後、本当にこの車で良かったのかな?という不安に駆られることがありますよね。
かすかな疑問を打ち消すため、再度購入した新車のパンフレットに目を通します。そのデザインや機能性を再確認し、下した判断に間違いは無かったと自身を納得させます。不安を確信に変え、一連の新車購入の作業を全て終えることになります。
これと似たようなことが旅先でも行われているのかもしれません。
奈良公園の鹿。
奈良へ旅行したなら鹿は必須アイテムです。
必ずと言っていいでしょう、一枚や二枚は撮影するのがお決まりです。背景やポーズこそ違えど、奈良の鹿にカメラを向けることに変わりはありません。奈良公園の敷地は広く、探せば”穴場撮影スポット”も見つかるかもしれません。でも、プロのカメラマンでもない限り、そこまでして撮影対象を探す旅行客も見当たりません。
まずはベタな撮影対象が先です。
東大寺の大仏、平城宮跡朱雀門、法隆寺五重塔なども世界的に有名です。絵葉書で見たことのあるような写真を、自分のカメラでも撮影します。でも、それでいいんです。
オリジナリティの追究よりも、定番の踏襲に重きを置きます。そうすることによって安心を得、あぁ来て良かったなぁと思うのです。
ベタとは、一面に隙間の無いことであり、べったり密着するさまを言い表します。「ベタ惚れ」という言葉によく表れていますよね。痘痕(あばた)もえくぼに見えてしまうのでしょう。
ベタには遊びや工夫がありません。それでも評価を得られるということは、裏を返せば、ブランド価値が高いということではないでしょうか。
観光客のまなざしがどこに向けられているのか。
今一度、観光資産の洗い直しが必要な時かもしれません。