牡丹にばかり注目が集まりがちな長谷寺。
ゴールデンウイークを前に賑わいを見せる長谷寺境内。初夏の陽気を感じさせる中、高貴な雰囲気を漂わせる御衣黄桜(ぎょいこうざくら)が開花していました。長谷寺の拝観パンフレットを見てみると、4月の花譜(はなふ)の中には実に様々な種類の桜が見られます。枝垂桜、山桜、染井吉野、奈良八重桜、紅枝垂桜、鬱金桜(うこんざくら)等々の中に御衣黄桜の名前も入っていました。
長谷寺の御衣黄桜。
花の中心部に赤い条線が見られます。開花時の御衣黄桜は鮮やかな薄緑色をしており、赤い筋は目立たないのですが、徐々に中心部から赤みが増してきます。散り際にはかなり赤くなるということですので、写真の御衣黄桜はそろそろ散りゆくタイミングなのかもしれません。
開花場所は宗宝蔵受付裏手と本坊前
広い長谷寺の境内で、どこに御衣黄桜が咲いているのかをご案内致します。
まずは宗宝蔵(しゅうほうぞう)の拝観受付の背後です。長谷寺仁王門をくぐり、399段続く登廊を登って行きます。ほどなく右手に長谷寺に伝わる国宝・重要文化財の宝物公開で知られる宗宝蔵が姿を現します。宗宝蔵の門をくぐると、すぐ左手に拝観受付があります。その背後に植えられているのが御衣黄桜です。
実際に御衣黄桜を至近距離から観賞するには、宗宝蔵の北を通る道に出ることをおすすめ致します。この道は二本の杉や藤原定家塚・俊成碑へ通じており、長谷寺名物の登廊を斜めの角度から見ることの出来る絶好の撮影スポットでもあります。
長谷寺本坊前に咲く御衣黄桜。
肉厚の花弁が外側に反り返っているのが分かります。この花弁の形は御衣黄桜の特徴の一つであり、その枚数は10~15枚ほどと言われます。量感たっぷりに咲く御衣黄桜は八重咲きの品種なんですね。
長谷寺ご本尊の御足に触れることのできる特別拝観券です。
仁王門向かって左側の拝観受付で拝観券を購入する際、係りの女性に薦められて購入致しました。通常の入山料は500円で、本堂の特別拝観料が1,000円ですから、このチケットは少しだけ割安ということになるのでしょうか。1,300円の特別拝観券を手に、いざ本堂を目指します。
宗宝蔵の前庭に咲いていた牡丹。
開き切った牡丹よりも、まだ蕾の状態の牡丹に魅かれます。私が訪れた4月27日の開花状況ですが、満開の一歩手前といったところでしょうか。所々にぷくっとした牡丹の蕾が見られ、GW本番への期待が膨らみます。例年通り、今年も長谷寺の牡丹はゴールデンウイークに見頃を迎えるのではないでしょうか。
「二本の杉」へと通じる道沿いに咲く御衣黄桜。
手摺りを超えて花弁と葉っぱがしな垂れます。葉っぱを見れば、間違いなく桜であることが分かります。遠目からは花が咲いているのかさえ、見分けの付きにくい御衣黄桜ですが、こうやって近くまで来るとはっきりとその姿が確認できます。
登廊を背景に御衣黄桜を撮影。
やはりこのアングルがいいですね。いかにも長谷寺、といった趣が感じられます。
長谷寺の境内地図に目を落とすと、本坊前に咲く御衣黄桜が「御所桜」と案内されています。
御衣黄桜の歴史を辿れば、江戸時代に京都の仁和寺で栽培されたのが始まりとされます。名前の由来は、御衣黄桜の花の色が貴族の衣服の萌黄色に似ているからなんだそうです。新緑の深い緑とはまた違った、どこか清楚でノーブルな雰囲気を漂わせる色をしています。
国宝の長谷寺本堂。
向こうに新緑に包まれる五重塔が見えます。読経の声が響き渡る長谷寺本堂を歩きながら、十一面観音様の御慈悲に触れます。
御衣黄桜の向こう側に、高くそびえる天狗杉を望みます。
仁王門から真っ直ぐに伸びた登廊は、一旦繋屋によって右へ曲がります。その右折する場所に天狗杉はそびえ立ちます。長谷寺の舞台からもその姿をはっきりと確認することができます。
再び本坊前に咲く御衣黄桜。
塀沿いの牡丹の上には黒いネットが張られています。
長谷寺ぼたんまつりには、毎年数多くの参拝客が詰め掛けます。
言わずと知れた観音霊場の聖地ですが、昨今では開運招福を祈願する大和七福八宝巡りの霊場としても人気を集めています。本堂横の大黒堂には、結縁財宝の大黒天が祀られています。
ぎりぎりのタイミングかと思われますが、開花している御衣黄桜に出会えてよかったです。
今回の長谷寺参拝の一番の収穫であったような気が致します。