岡寺の伽藍跡に鎮座する治田(はるた)神社。
八幡宮と称していた時期もあったようで、応神天皇を祀ります。
岡寺へ続く急坂を登って行くと、やがて左手に治田神社が現れます。神社の所在地ですが、岡寺仁王門の西方に当たります。
治田神社鳥居と本殿。
神明鳥居の奥に、厳かな本殿を祀ります。
治田神社の御祭神ですが、応神天皇の他にも素戔嗚尊、大物主命が名を連ねています。
発掘調査地に並ぶ福石や礎石!岡寺の鎮守神
徒歩で飛鳥寺方面から石舞台古墳へ向かう途中、左手に立派な石鳥居が見えてきます。
鳥居をくぐった先にあるのが岡寺です。
てっきり坂の下にあるその鳥居は岡寺の鳥居だとばかり思っていましたが、治田神社のものでした。よく考えてみれば、鳥居は神社のものですからね。お寺に鳥居は不釣り合いです。
南面する治田神社本殿。
本殿の斜め向かいに建っているのは社務所です。
本殿の東側には、かつての岡寺の礎石や福石が並んでいました。
治田神社の由緒沿革。
当社の創建は明らかではないが、延喜式巻十の延喜神名帳の式内社とされているので、平安時代(10世紀)には社があったことが分かる。さらに当境内地からは凝灰岩の基壇や礎石、瓦が出土することから、8世紀初頭の岡寺(龍蓋寺)創建伽藍があったと推測されており、寺の鎮守神として、境内地に祀られていた可能性がある。この鎮守神を祀ったのが、後に治田神社になったとも考えられる。
元々は治田氏の祖伸が奉祀されていた。文安年間(1444~1448年)に一時大国主命の和魂である大物主命を奉祀されたことが古書にある。さらに社名を八幡宮と称して応神天皇を奉祀し今日に至っている。
二宮金次郎の石像でしょうか。
薪を背負って読書する姿は、勤勉の象徴だと思われます。足元を見ると、「拝殿改築記念」と記されています。
割拝殿の東側に、巨大な手水石がありました。
残念ながら今は機能していないようですが、鉢の上にはホースが巻かれています。
治田神社の幣殿。
拝殿と本殿の間に設けられたスペースです。
男神を表す外削ぎの千木が天を突きます。
唐破風の上に目をやると、三つ巴紋が見えました。
治田神社の御祭神が案内されています。
【祭神】応神天皇 素戔嗚尊 大物主命
【行事】元旦祭(1月) 早苗饗(さなぶり、6月) 豊穣講(9月) 秋祭(10月) 新穀祭(12月)
治田神社の拝殿内。
お札が貼られ、切妻の真下には絵馬が掛かります。
治田神社の境内図。
発掘調査地のエリア内に、福石や礎石、遥拝所石碑が並んでいます。
現在地が赤印で示されていますが、ちょうどこの右手が岡寺仁王門です。
治田神社の福石。
地道を挟んで向こうに柵が見えていますね。あの扉を開けて東方へ向かうと、岡の立石があります。
治田神社へ続く道を挟んで福石が向かい合います。
この石も昔から存在していたのでしょうか。
遥拝所石碑の手前にあるのは礎石?
上面が平らで、礎石のような見た目です。
ここに岡寺があった証なのでしょうか。
周囲には何の説明も無く、この石が礎石なのかは定かでありません。
遥拝所石碑。
治田神社の本殿東に建ちますが、どこを遥拝する石碑なんでしょうか。方角的には北を遥拝していますね。
石碑の真ん前に埋め込まれた石。
先ほどの境内図から察するに、これも礎石なのでしょう。
史跡岡寺跡の解説。
岡寺は義淵僧正によって建立されたと伝えられる寺院であるが、創建当初の伽藍は仁王門の西方、ここ治田神社境内地にあったと考えられている。境内地には礎石がいくつか残っており、拝殿の地覆石には凝灰岩の切石が使われている。また、古瓦の散布もみられることから、このあたりに古代の建物があったことは間違いない。
昭和57年には橿原考古学研究所によって発掘調査が行われており、基壇建物の北端を画したと思われる凝灰岩の切石が4.5mほど並び、その東端に階段があったらしいことも分かっている。その他の建物や伽藍配置については不明であるが、岡寺所蔵の寛文年間(1661~1672)の絵図には、治田神社付近に金堂や講堂・塔の跡地が描かれている。発掘調査で見つかった建物は、南向きに建つ7間✕4間の金堂と推定される。
治田神社の福石。
所々に黒い斑紋が見られます。飛鳥石によく見られる特徴ですが、ここは明日香村ということで気になりますね。
福石から東方に振り返ります。
ちょうどこの突き当りが岡寺の仁王門です。
明日香村にはミステリーストーンがたくさんあります。
不思議な石造物が飛鳥の代名詞のようにもなっていますが、この福石もその範疇に入るでしょう。
拝殿前の石像。
踵を上げ、”動き”が感じられます。
ここから下手へ、参道を兼ねる石段が続きます。
この石段です。
治田神社の鳥居をくぐり、岡寺へ続く坂道を登って行くと左手に現れます。両脇に石燈籠が建ち、ここが治田神社の入口であることが分かります。この石段をせっせと上がります。
治田神社へのアクセスに、この石段を使う人は少ないかもしれません。
岡寺の門前から向かう人が多いでしょう。
息を切らしながら登って行くと、割拝殿に到着します。
注連縄に紙垂が下がり、神聖な結界が張られていました。