歌枕とは枕詞であり、古来多く歌に詠まれた名所のことを意味します。
嵐山や和歌の浦などの名所を「歌枕」と言い、和歌を作るときに必要な言葉や名所を記した書物なども「歌枕」と表現します。拠り所となる典拠も歌枕なんですね。歌枕の解釈が広がったような気がします。
大神神社の境内手前に咲く芙蓉。
かつて大神神社に於いて、歌枕直美さんの奉納演奏がありました。古事記や万葉集を題材にした美しい歌声で知られる歌枕直美さん。お名前そのものが歌枕であり、素直に親しみを覚えたものです。今もドライブ中には、歌枕直美さんの歌をよく聴いています。
歌枕で盛り上げるコンテンツツーリズム
奈良県内には数多くの万葉歌碑が建っています。
歌の舞台にもなった名所が数多くあり、いにしえの時代を偲ばせます。他にはない唯一無二の観光コンテンツであると言えるでしょう。
明日香村祝戸地区に建つ万葉歌碑。
映画ロケ地の誘致で盛り上がるフィルムコミッションもコンテンツツーリズムの一つです。さらには、福山雅治さんの歌った「桜坂」にも数多くのファンが集ったと言います。奈良観光特別大使を務める堂本剛さんですが、堂本さんゆかりの場所には箔が付くというものです。
現代のスターが絡んでこそのコンテンツツーリズムなのでしょうか。
いや、そんなことはない。
恋にまつわる歌は数多く残っています。そして、その歌の作者は誰もが知る日本史の有名人だったりします。恋愛は普遍的テーマであり、誰もが通る道です。誰しも自分事として捉えることができます。そこには今も昔も無く、鏡王女の ”われこそまさめ” などは、ストンと胸に落ちるのです。
石舞台古墳前の道標。
誰もが学校で習った枕詞。
「ちはやぶる」などは映画にもなり、大ヒットしましたよね。語感の良さ、古語ならではの言い回しは若者の間で流行ってもおかしくないと思うのです。いつの時代にも若者言葉は生まれます。大人が耳にしても通じない言葉ではありますが、その中のいくつかはジェネレーションを飛び越えて定着していくものです。
広辞苑に掲載されるなんてこともあります。
時の流れの中で言葉は変遷します。転訛、倒語、俗語等々、様々な変化を繰り返しながらより便利な言葉へと定着していきます。言葉は生き物なのです。
歌枕はコンテンツツーリズムの材料になる。
アニメの聖地巡礼、アイドルの聖地巡礼と同じように歌枕の聖地巡礼も立派なコンテンツツーリズムとして成立します。歌枕に関心を持ち、古語に親しむ。舶来の漢字ではなく、ひらがなに立ち返って日本の文化に触れてみる。とても意義あることだと思うのですが、いかがでしょうか。