『吾れこそ益さめ御思いよりは』鏡王女

われこそまさめ。

万葉集に出てくる鏡王女(かがみのおおきみ)のフレーズです。

あなたよりも私の想いの方が勝っていることでしょう、という意味ですね。古今東西を問わず、見事に恋する人の想いを代弁しています。われこそまさめ みおもいよりは・・・そのままひと塊で胸にストンと落ちてきます。

鏡女王押坂墓

鏡女王押坂墓

桜井市忍阪の舒明天皇陵からさらに上手へ向かうと、右手のせせらぎ沿いに ”われこそまさめ” の万葉歌碑が建っています。

恋に落ちると、相手の想いが気になるものです。たとえ好意を抱いていてくれるにせよ、どのぐらいなのか?私の想いよりも強いのか弱いのか。私の想いはどんどん膨らみ続けて重たくなる一方だけれど、はたしてあなたはどうなの?まさか軽いなんてことはないでしょうね、いや、やっぱり軽いに違いない。悶々とする恋慕の情は誰しも見覚えがあるのではないでしょうか。

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言葉はコンテンツツーリズムの対象になり得る

なぜこの万葉歌を思い出したかというと、桜井市が誇る観光資源に他ならないからです。

ストーリー性を帯びたアニメの聖地巡礼が人気を呼んでいます。かねてから映画ロケ地としてのフィルムコミッションにも取り組んでいた桜井市ですが、元々持っているものを活かさなくてはなりません。

鏡王女の墓は桜井市内の忍阪にあります。

鏡女王押坂墓

そう、恋は重いのです。

相手に対する想いが募れば募るほど、重苦しくなっていきます。そうすると、その対象であるあなたの ”私に対する想い” を推し量りたくなります。ちょっと怖いけれども、きちんと確かめたくなる。でも、確かめようがないので私の想いの方が強いと、一旦は決着してみる。

でもやっぱり・・・と堂々巡りが始まります。

舒明天皇陵近くに咲くケイトウ

舒明天皇陵へ向かう道中に咲くケイトウ。

鏡女王の墓は、舒明天皇陵からさらに上手に位置しています。

秋山の 樹の下隠り 逝く水の 吾れこそ益さめ 御思いよりは

天智天皇への想いを詠った万葉歌でしたが、天皇の御心はやがて鏡女王の妹である額田王へと移っていきます。なんとも儚い恋心。

舒明天皇陵駐車場

舒明天皇陵の駐車場。

鏡女王の万葉歌碑を見学するには、ここに車を駐車することになります。

舒明天皇陵

舒明天皇陵。

天皇陵特有の八角墳として知られます。

舒明天皇陵

かなり前になりますが、来生たかお作曲の『疑問符』という歌がありました。

アイドル歌手・河合奈保子の楽曲ですが、そこにも似たようなシーンが描かれています。

あなた教えてよ 私ほど同じにさみしいの あなた教えてよ ひとりなら同じにさみしいの

いつの時代も同じですね。

鏡女王が詠った「われこそまさめ みおもいよりは」は、時を超えて私たちの胸に迫ります。

昔の人の言葉には、一種独特のリズムや響きがあります。その言葉そのものが、観光の対象になりはしないか。そんなことをぼんやりと考えています。

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