オアフ島のコオラウ山脈南斜面に位置するマノアの滝。
「虹の谷」とも呼ばれる場所に、高さ60mの滝が流れ落ちています。
”マノアが雨でもワイキキは晴れ” と言われるように、年間を通して雨の多いエリアとして知られます。8月末に訪れた当日も、出発地点のワイキキは晴れていましたが、辿り着いたマノア滝周辺は土砂降りの雨でした。
バニヤンアーチ。
マノアの滝へ至るトレイルコース上に突如現れるバニヤンツリーのトンネルです。
枝から無数に垂れる気根が、旺盛な生命力を感じさせます!
虹の女神・カハラオプナの伝説が残るマノア渓谷
マノアの滝の manoa には、「広い」という意味があるようです。
マノア・フォールズ・トレイルの道のりは片道1.3㎞で、およそ30分ほどでゴール地点の滝壺に到着します。最初は舗装された道を歩きますが、徐々に道幅も狭まり、ぬかるんだ地道を辿ることになります。剥き出しのゴツゴツした岩や緑深い原生林の中を歩きます。
マノアの滝にはオプショナルツアーも用意されていますが、今回は個人旅行のため自分たちの脚で向かいました。
マノアの滝の滝壺。
2002年に滝壺周辺で土砂崩れがあり、残念ながら今は遊泳禁止になっています。
水質にも多少問題があるようで、レプトスピラ症の危険性も示唆されています。マイナスイオンに癒され、つい解放的になりがちですが、くれぐれも滝壺の中には入らないようにしましょう。
道中では竹林も見られました。
元来、ハワイには竹が生えていません。日本やアジア方面から持ち込まれたものが、原生林の一角を担います。不思議な光景ですが、私たち日本人にしてみればどこかホッとするものを感じますね。
木の幹に描かれた落書き。
これはちょっとガッカリしますね。
トレイルコース上の木々に、ハートマークをはじめとする様々な落書きが見られました。京都嵯峨野の竹林や神社仏閣の柱にも刻まれる心無い落書き・・・観光客のマナーが求められますね。
バス停からマノア・フォールズ・トレイルの入口を目指します。
すごい雨が降ってきました!
入口手前に休憩できるショップがあり、そこへ足を踏み入れます。あまりに雨が強かったため、簡易レインコートを購入することにしました。マノア観光では、服装に注意が必要ですね。
虫除けスプレーの注意書き。
館内の貼り紙に、” Please Spray All Bug Repellent Outside of Building Mahalo ! ” と書かれていました。repellent とは忌避剤のことで、要するに bug repellent で虫除け剤のことを意味しているのでしょう。動詞の repel には、撃退するという意味があります。虫除けスプレーは館内ではなく、外で吹きかけてネということだと思います。
最後の mahalo (マハロ)は、ハワイ滞在中によく目にした単語です。ハワイ語でありがとうを意味します。
薄手のレインコートを身に纏い、一路滝を目指して出発です。
年間降水量をチェックすると、ワイキキの15倍強は降るというマノアの周辺エリア。
ここにもバニヤンツリーらしき巨樹が!
Banyan Tree は無花果(イチジク)の仲間なんだそうです。
ベンガルボダイジュという菩提樹の仲間でもあり、大きく横に広げた枝から気根という長い根を垂らします。「支持根」とも呼ばれる気根は、そのまま地面に届くと新しい幹になり木の成長を助けます。根が幹となり、さらに新たな木が育っていくのです。そんなことを幾度も繰り返しながら周囲に拡散していく様子は、無尽蔵の生命力を表わします。長寿や豊饒の象徴とされたのも頷けますね。
道中の水溜まり。
これはもう、川と化しています。
なぜマノアの滝周辺には雨が多いのか?
どうやらその理由は地形にあるようです。海の湿気を含んだ風がコオラウ山脈にぶつかることで、その麓のマノアに大量の雨が降ります。
マノア・フォールズ・トレイルの入口。
水の豊かなマノアには、虹の女神・カハラオプナの神話が伝わります。
言い伝えによると、その昔、マノアの滝にカハラオプナという美しい王女が住んでいました。カハラオプナの父は風の神、母は雨の神で、その娘であるカハラオプナは虹の女神として誕生したそうです。
その美貌故か、許嫁(いいなずけ)の友人に横恋慕され、最後は許嫁によって命を奪われることになります。助けによって幾度も蘇ったカハラオプナですが、その都度、絶命へと導かれる運命を辿ります。終に蘇生することなく命を落としたカハラオプナは、この地で虹になったと伝えられています。
マノア・フォールズ・トレイルの地図。
全行程が入口付近に掲示されていました。
ここを入って行きます。
それにしても、雨は止む気配がありませんね。
原始の森が出迎えてくれます!
手つかずの森なのでしょう、鬱蒼と生い茂った緑が雨に煙ります。
カメラのレンズにも容赦なく雨粒が覆い被さります。
ボンヤリした被写体が、マノアに降る霧雨を物語っています。
この霧雨は Tuahine (トゥアヒネ)と呼ばれているようです。
ハワイの街中を走る車のナンバープレートに目をやれば、ハワイを象徴する虹が描かれています。そう、ハワイは虹が綺麗なのです。虹の谷・マノア渓谷には、古来より虹の女神・カハラオプナの悲話が伝わります。
倒木が横たわっていました。
樹齢は定かではありませんが、かすかに年輪も見えていますね。
レンズが曇ります。
マノアに降る雨のお陰で、臨場感が生まれています。
隆々と盛り上がる木の根っこ。
足場はぬかるみ、履いてきた靴も既に泥だらけです。
靴下にも雨が沁み込み、すぐにでも脱ぎたい衝動に駆られました。帰りのバスの中では、裸足にサンダルという格好でした。マノアの滝へ行く際には、タオルや着替えの服は持参した方が良さそうです。
こんな場所にも出ます。
アラモアナセンターから「マノア・バレー Manoa Valley」行きの The Bus に乗車し、約30分で終点のバス停に到着しました。バスを降りると、既に雨脚はきつくなっています。バス停におられた、おそらく地元にお住いの日本人女性からアドバイスを頂きました。
「雨の日は増水するので、川の方へは近づかないこと」。
その言葉を思い出し、そっと覗き込むだけに留めておきました。
日本では見かけない蛙も棲息しているようです。
さすがは原生林ですね。
雨に濡れた葉っぱが綺麗です。
大自然の恵みを受け、艶々と光っていました。
混雑する滝壺周辺!標高110mの深い森
マノア渓谷の最深部にあるのがマノア滝です。
滝壺の手前100mほどの場所からも、流れ落ちる滝を視界に収めることができます。
徐々に道は狭く、急な階段も増えて参ります。
最後の方では往来も困難な細い道になります。ゴール地点の滝壺前は面積もさほど広くなく、次から次へとやって来る観光客で混雑します。記念撮影の順番を待って、撮影し終わったら引き返すといった流れです。
マノア・フォールズ・トレイルでは、無料貸与の杖も準備されているようです。
私たちはそのことに気付かず、杖無しで向かいました。
四方八方にうねる枝!
どなたかが枝の上に登っておられました。
この行為も、おそらくマナー違反の範疇に入るのでしょう。
これは一体、何の木でしょうか?
米国のテレビドラマ『LOST』や、映画『ジュラシックパーク』のロケ地にもなったというマノア渓谷。アメリカ人の目からしても、この地は貴重な自然遺産として一目置かれているのでしょう。
剥き出しの根っこ。
長い時の流れを感じさせますね。
まだまだ道は続きます。
雨が降っていたせいか、必要以上に先を急いでしまいました。もっとゆっくり、周りの自然を満喫しながら歩きたかったなと思います。でも、強い雨のお陰で蚊に悩まされることはありませんでした。
所々に案内板がありました。
とにかく、どこもかしこも足元はずぶずぶです。
竹林!
なかなかシュールですね。
名も知れぬ花が咲いていました。
最終地点の滝壺まであと少しです。
ついに到着しました!
これがマノアの滝です。
勢いよく流れ落ちる滝の周りに、見事な虹が架かっていました。
右手下方に目をやると、記念撮影の真っ最中でした。
外国人観光客が石の上に立ち、ポーズを決めておられました。
かなりの水量です。
マノアの滝ですが、滝壺の水質は決して良くはないようです。
レプトスピラ症の恐れがあると言いますから、観光客は心しておかなければなりませんね。
熱帯・亜熱帯地域に多く見られるレプトスピラ症ですが、急性熱性疾患の一つで「レプトスピラ菌」が原因とされます。菌を持つネズミや犬、家畜などの哺乳動物の尿から排泄され、土壌や水を数週間にわたり汚染するようです。
人が感染するのは、皮膚や粘膜からレプトスピラ菌が体内に侵入することによります。レプトスピラ症の流行地域では不用意に水に入らないこと、特に洪水の後には絶対に入らないことが重要とされます。
それにしても美しい!
見るだけに留めておくのが ”吉” ですね。
カハラオプナの伝説と共に、ハワイの人の心に長く居座り続ける名瀑です。
落石注意の看板。
ここから先へは立ち入らないように、とのお達しです。
滝の手前を左折するルートがありました。
アイフアラマ・トレイルというコースが続いているようです。
ここへ来る途中に川が流れていましたが、その川の名前を Aihualama Stream と言います。今回はさすがに時間に余裕が無く、別のトレイルコースへ向かうことはありませんでした。アイフアラマ、是非次回はトライしてみたいですね。
普段よりも水量は多い方だと思われます。
これだけ雨が降っているのですから、当然と言えば当然ですね。
どこを切り取っても絵になります。
上りと下りで行き交う人々と声を掛け合いながら、安全第一に帰路を辿ります。
このプリミティブな雰囲気に癒されます。
雨もまた良し、そう思わせてくれる魅力がマノアの滝にはあります。
ROAD NARROWS の道路標識。
やっとの思いで麓の方まで下りて来ました。
不思議と、晴れていれば良かったのになとは思いませんでした。
ずぶ濡れのマノアの滝!
オアフ島での貴重な体験レポートでした。