唐招提寺の駐車場から西へ向かい、唐招提寺の入口である南大門へと辿り着きます。
既に数人の参拝客が、南大門左手にある拝観受付で拝観料を納めておられました。優美で軽やかなイメージのある薬師寺に対し、唐招提寺には質実剛健な雰囲気が漂います。その入口に当たる南大門からも、質素な空気が伝わって参ります。
唐招提寺南大門。
東大寺南大門よりも遥かに小さい建物です。両脇に仁王像が立っているわけでもなく、そこは単に参拝客の出入口になっているようでした。
1960年に再建された切妻造の南大門
唐招提寺南大門は、鑑真和上1200年忌の昭和35年(1960)に天平様式で再建されています。
五間の中央に三扉とする、切妻造りの建物です。遺っていた礎石から、規模や形式が推定されて造られています。
門の左手前には木が植えられていました。
聖武天皇の招きで来日を果たした唐の高僧・鑑真。
苦難の末の来日から数えて5年後、天平宝字3年(759)に戒律修行の道場として開かれた唐招提寺。鑑真の私寺であったため、国家予算を注ぎ込んだ官寺とは趣を異にしていました。
駐車場に車を停めて西へ歩いて行くと、右手に唐招提寺南大門が見えて参ります。
その手前に、「史跡唐招提寺旧境内」と刻まれた石標が建っています。
唐招提寺南大門から国宝の金堂を望みます。
真正面に見える金堂は、日本最大規模の天平建築として知られます。微妙な膨らみをもたせたエンタシスの柱、美しい屋根瓦で参拝客を魅了し続ける唐招提寺を代表する建物です。
金堂内には、ご本尊の廬舎那仏坐像が安置されています。
千体光背を持つ重厚感のある仏像で、像高は3mにも及びます。ご本尊の左手には、953本の手を持つと言われる千手観音立像が佇みます。実際には1,000本の手があったと伝えられるインパクトのある仏像です(47本は欠失)。
境内の奥手、北東方向にある鑑真和上御廟。
苔生した御廟の入口付近を歩いていると、数年前に訪れた秋篠寺の苔庭の雰囲気によく似ているなと思いました。
唐招提寺南大門の扁額。
この扁額は複製で、その実物は講堂内に収蔵されているようです。
唐招提寺講堂。
平城京にあった高官の接見場所である「東朝集殿」を移築したものです。現存する唯一の天平宮殿建築とされます。
講堂も国宝に指定されており、堂内には重要文化財の弥勒菩薩坐像が安置されています。
蓮の開花する季節になると、唐招提寺、薬師寺、喜光寺の三箇寺がロータスロードと呼ばれる催しを行います。初夏の奈良を彩るロータスロードの蓮は、旅行客にも是非おすすめしたい見所の一つです。
天平文化に身を寄せながら、苦難に満ちた鑑真和上の歩みを辿ります。
その入口に当たるのが、こちらの南大門です。