山の辺の道の弘仁寺は十三参りで知られます。
7月下旬から8月上旬にかけて見頃を迎える弘仁寺のノウゼンカズラを見たかったのですが、今回の参拝は少し時期的に遅かったようです。境内にはわずかにピンク色の百日紅の花が咲いていました。
弘仁寺本堂前に掲げられる算額。
勉学に励むことを祈念して奉納された江戸時代の算額です。高度な数学の問題と解答が記されており、虚空蔵菩薩を祀る弘仁寺ならではといったところです。
元服の年にお参りする弘仁寺
元服とは成人儀式のことで、古来より男子はもとどりを結い、冠を付け、大人の装束を身にまといました。女子の場合には、髪上げや裳着(もぎ)によって成人の印としました。中世には「元服劣り(げんぶくおとり)」という言葉があり、元服したために、以前より容姿が見劣りすることも多々あったようです。
何はともあれ、大人への階段を着実に上る節目として重要な儀式の一つでした。
弘仁寺本堂。
弘仁寺の十三詣りには祈祷と法話が行われます。
古(いにしえ)より、人、生まれて十二支を一巡りして十三歳ともなり、この尊堂にお詣り祈願すれば、福徳知恵の二大利益を授かるといわれています。十三歳は元服の年、いわゆる大人の役割を期待された歳でもあります。
御仏の教えに導かれ、より良き人生に挑まれんことを祈念し、虚空蔵菩薩、求聞持法(ぐもんじほう)ゆかりの古刹にご参拝下さい。
「和算に於ける多乗根の・・・」
志納料300円と記されています。学生時代には数学が苦手だったこともあり、何の事かちんぷんかんぷんなのですが(笑)、どうやら難解な問題のヒントでも頂けるのでしょうか?
本堂前にある弘仁寺の社務所。
弘仁寺は予約必須ではありますが、宿泊することも可能です。
虚空蔵山の自然を満喫しながら精進料理が味わえます。山寺の宿泊を体験したい方にとってはオススメですね。
弘仁寺十三詣りのポスター。
毎年4月13日には、知恵を子供に授ける十三詣りが執り行われます。
弘仁寺の小冊子に「求聞持法ゆかりの古刹」と案内されていましたが、求聞持法とは一体何を意味する言葉なのでしょうか。
求聞持法(ぐもんじほう)とは仏語の一つで、密教における虚空蔵菩薩を本尊として行われる ”記憶力増進” のための修法のことを言います。暗記の天才と云われた稗田阿礼も真っ青になるほどの修法なのでしょうか。弘法大師空海が19歳の時、室戸岬の波打ち際の洞窟で修得したと伝えられる虚空蔵求聞持法。
空海の悟りに触れることのできる十三詣り、これはやはり魅力的です。
本堂前には百日紅の花が咲いていました。
弘仁寺の住所は、奈良県奈良市虚空蔵町46 です。
住所にも虚空蔵の名前が付いているほどの名刹です。奈良県内で知恵の神様といえば、桜井市の安倍文殊院をまず思い浮かべますが、山の辺の道沿いにひっそりと佇む弘仁寺の名前も覚えておきたいところですね。