奈良県立民俗博物館のエントランスホールに「ふくいの婚礼」と題するチラシが置かれていました。
福井県の婚礼風習を案内する特別展が、福井県立歴史博物館に於いて催される予定です。愛知県も派手婚で知られますが、実は福井県も名古屋近辺の派手な結婚式に負けず劣らず、かなりインパクトのあるもののようです。
特別展『ふくいの婚礼』。
大和民俗公園の駐車場に戻り、頂いて来たチラシに目を通します。
昨今は「なし婚」などという言葉も聞かれるようになり、結婚式を挙げないカップルも数多くいらっしゃるようです。そんな風潮の中で、昔ながらの結婚式風景を振り返る意義は大きいのではないでしょうか。
福井県の結婚式を特徴付ける一生水と万寿まき
結婚式を写真だけで済ませる。
そんな流れもまた、最近のブライダル業界では一つの選択肢になりつつあります。フォトウェディング、ロケーションフォト、ロケ婚等々の言葉が聞かれるようになったのもここ最近のことだと思われます。結婚式場で結婚式を挙げずに、婚礼衣裳をレンタルして風光明媚な場所で記念写真を撮る。満面の笑顔で撮った二人の写真が、結婚式の代わりになるという時代です。
福井市での婚礼風景が白黒写真で紹介されています。
一生水(いっしょうみず)と万寿(まんじゅ)撒きの様子が伝えられます。へ~、なんだか活気があるなぁという印象です。結婚式はやっぱりこうでなくちゃ!と思わせてくれるお写真ですね。
大神神社御用達の料理旅館大正楼。
結婚披露宴の招待人数も昔に比べれば減少傾向にあるでしょうか。昔は当館で催される披露宴も50名様前後が普通でしたが、昨今では20~30名様前後が一般的です。あるいは結婚披露宴とは言わずに、親族のみの会食を希望されるお客様も数多く見受けられます。
二人の将来を誓い合う結婚を控え、大神神社の結婚式をご検討中の方もおられることでしょう。
結婚式の歴史を振り返れば、そもそもそれは自宅で執り行われるものでした。
神社や教会で結婚式を挙げるようになったのは、比較的最近のことなのです。家と家とのつながりに比重が置かれていた昔の結婚では、婚礼の演出舞台も自宅であったことが分かります。自宅婚というわけではありませんが、数年前には当館大正楼客室に於いても花嫁謝辞式が執り行われました。きちんとした形でご両親に結婚の報告をする。当たり前のことなのですが、改めて問い直したい風習ですね。
打掛と万寿箱。
福井の結婚情報サイト『キラリ』に、一生水と万寿箱に関する記述がありましたのでここに引用させて頂きます。
挙式当日、嫁入り(婿入り)する本人が、婚家に入る前に玄関で一升マスの中のかわらけ(土器)を取って、その中の水を飲みます。このことを「一生水の儀」といいます。「一升」は「一生」に通じ、”一生その家の水を飲ませてもらう”、”一生その水が合うように”という意味を含んでいます。
水を飲んだ後のかわらけは土間に落とし、割れればめでたく、割れないと縁起が悪いといわれたようです(たいていは割れるようにもろくできています)。福井では今でも花嫁一行が到着すると、それを見物に来ている人たちに万寿を手渡したり、家の2階や屋根の上から万寿をまく風習があります。最近は万寿だけでなく、そばやラーメン、スナック菓子など、にぎやかにまかれています(結婚式の演出に取り入れている式場もあります)。
なるほど、”水が合う” わけですね。
水は生活全般に渡る基本です。ゆくゆくは嫁ぎ先の家で、「水を得た魚のように」泳ぎ回ることが期待されているのです。しかしながら、女性の社会進出が盛んになった昨今では、嫁ぎ先の家の色に染まるなんてことは歓迎されないのかもしれませんね。
イッショウミズ・・・色々なことを考えさせてくれる婚礼習慣ではないでしょうか。
大和民俗公園には紫陽花が咲いていました。
6月はジューンブライドの季節でもあります。
日本ではなかなか根付いていないジューンブライドですが、言葉は独り歩きを始めるものです。「一生水」や「万寿まき」も決して限られた地方だけのものにしておくのは勿体無い気がします。そういう婚礼の風習がかつてあったことを、私たちは語り継いでいかねばなりません。
個の時代と申します。
この先また、古き良き時代に戻って行く流れが来るのかもしれません。「時代は繰り返す」と言いますから、昔の婚礼習慣の良さが見直される時代がやって来るのかもしれませんね。