もちっとした味わいの蓮餅(れんもち)。
冬の定番料理として知られますが、今回は蓮餅の周りに春雨を衣のように付けて揚げてみました。
蓮根まんじゅう春雨仕立。
椎茸、ジャガイモ、銀杏等々の食材と合わせ、滋味を蓄えた蓮根の味わいを楽しみます。最後に本吉野葛で溶いた出汁を張って、温かい状態を保ってお召し上がり頂きます。
雪の中庭を愛でながら冬の料理を堪能する
穴の通った蓮根は、先の見通せる縁起物として知られます。
お正月料理をはじめとする祝い膳にはぴったりではないでしょうか。蓮根の歴史は古く、万葉集の時代には既に「はちす」の名前で登場しています。矢羽根蓮根や蛇籠蓮根など、美しい飾り切りの材料にもなり、私たち料理人の間でも人気の食材です。
蓮根饅頭を油で揚げる前に、適当な長さに切った春雨を周りに付けます。
春雨は奈良県桜井市の名産品でもあります。三輪そうめんにばかり注目が集まりがちですが、春雨も実は地元の逸品として知られています。春雨はジャガイモと薩摩芋のでん粉を水で練り、熱湯の中に糸状に絞り出して固め、さらにそれを乾燥させて仕上げます。油で揚げると膨張して、その姿を一変させます。
大正楼客室。
奈良の冬は底冷えがするとよく言いますが、今年はお正月から雪が降り、神様のおさがりを感じさせる空模様でスタートを切りました。お正月の雪は吉祥の徴(しるし)、と見てもいいのではないでしょうか。
雲丹のようでもあり、イソギンチャクのようでもあります(笑)
お祭り騒ぎで踊り狂っているとでも申しますか、そんな見た目のインパクトを感じさせます。
春先の若芽の出る頃、静かに降る細い雨のことを春雨と言います。「春雨じゃ、濡れて参ろう」は有名なフレーズですが、それほど春雨は大した雨ではないと言いますか、降っているのか降っていないのか分からないぐらいの細い雨のことを指します。春雨は下から降る、とも申します。雨は通常上から降るものですが、下から降っているのではないかと思わせるほど、春雨には微かな風情が漂っているのです。
大正楼中庭の蛙石。
中庭片隅の蹲(つくばい)の下に、蛙の形をした石が置かれています。
雪が降り積もり、心なしか蛙も凍えているように見えます。尋ね人帰る、お金が返るなどに掛けられ、こちらも縁起物として担がれます。がま口財布なども、蛙と返るに掛けた縁起物とされます。
とろみの付いた出汁に溶きながら、蓮根まんじゅうをお召し上がり頂きます。
お祝い事のお宮参りなどにもおすすめの一品となっております。