弘仁寺本堂の東側に建つ明星堂には、弘法大師空海作と伝えられる重文の仏像が安置されています。その名も明星菩薩立像。
明星堂に貼られていた明星菩薩立像の写真。
「威圧的な風貌に霊性」と題されていますね。
木造明星菩薩立像は重要文化財の仏像
一般的に明星と言えば、金星の異称として知られます。
「宵の明星」などと使われますが、万人がその徳や技能の高さを仰ぐような場合に、その対象となる人のことを「明星」と表現することもあります。
弘仁寺本堂から明星堂へ続く廊下。
向こうに見える石段は、一段高い所にある鐘堂へと続いています。
弘仁寺は虚空蔵山の山腹にあるお寺です。その地名から「高樋(たかひ)の虚空蔵さん」と親しまれています。標高183mの虚空蔵山に明星が落ちるのを見た弘法大師が、明星天子の本地仏である虚空蔵菩薩を祀ったのが始まりとされます。
弘仁寺本堂と、その右手に佇む明星堂。
本堂内には、これまた弘法大師空海作と伝わる虚空蔵菩薩像が安置されます。毎年4月13日の十三参りにおいて、子供に知恵を授ける催しが行われています。
元亀3年(1572)の松永久秀の兵火を逃れた明星堂。宝形造、本瓦葺の明星堂の美しいラインは、今も山の辺の道のハイカーたちを楽しませてくれます。
本堂から明星堂へと続く通路に北と南の方角が指し示されていますね。
どうやら弘仁寺の主要建築物である本堂と明星堂は、どちらも南向きに建てられているようです。
横から明星堂へと入って行きます。
賽銭箱の向こうに、びんずる尊者と大黒天が見えています。
お堂の正面に、役行者と不動明王と書かれた案内紙が貼られていました。
明星堂の中には、吉野の修験者として知られる役行者像も収められているのでしょうか。
明星堂の外陣向かって右側に大黒天が祀られていました。
七福神のお姿を拝見すると、なぜか安心するのは日本人の性でしょうか(笑)
大黒天の上に絵馬が掲げられています。
そのシルエットから馬であることが想像されます。
大黒天の斜め向かいにびんずる尊者が坐しています。
どこのお寺でもすっかりお馴染みのびんずる尊者。修業中にお酒を飲み、お釈迦様からお叱りを受けたとされます。そのために堂内には入れてもらえず、あえなく外陣で反省しているとか(笑) びんずる尊者の赤ら顔には諸説あって、赤い顔をしているのはお酒を飲んだからではなく、改心して修業を続け、心が充実しているからだとする考え方もあります。
威圧的な風貌と評される明星菩薩立像が、このお堂の中に立っておられるものと思われます。
徳の高い「明星」は空海その人なのでしょうか?空海作と伝わる仏像だけに、やはりそのモデルは他の誰かなのでしょうか。そんな他愛もないことをぼんやりと考えながら、弘仁寺の境内を歩きます。