奈良市内でも一際閑静な佇まいを見せる高畑町。
静かな街並みの一角に華厳宗日輪山「新薬師寺」があります。お寺を拝観するときに、意外と宗派は気にならないものですが、なぜかこの華厳宗だけは東大寺を連想させるためかふと目に留まるのです。新薬師寺の造営に当たったのは造東大寺司という官庁でしたが、そのことも何か宗派と関係があるのでしょうか。
新薬師寺のご本尊は、国宝の薬師如来坐像です。
ここに簡単にご案内しておきます。
国宝の薬師如来坐像
仏像にしては珍しく、瞳をぱっちりと見開いた仏様です。ふくよかな肉付きも、この仏像ならではのものを感じます。平安時代の国宝で、像高は1m90cmに及びます。本堂内の白漆喰の中央土壇に安置されています。
国宝の法華経8巻
新薬師寺の薬師如来坐像は一木造りといいますから、仏師の腕も立派なものだったんでしょうね。
如来像ではありますが、目をしっかりと開けて衆生をお見守り下さっています。概して仏像の目はどこを見ているのか分からないものですが、新薬師寺の薬師如来坐像に限ってはどこか安心感すら覚えます。如来像に対して少々失礼な物言いになるのかもしれませんが、ぽってりとした安堵感を覚えるのです。
国宝の十二神将に周りを囲まれ、長い年月に渡って大切に守られてきました。
光背の6体の小さな薬師像と本尊を合わせて七仏薬師を表しています。新薬師寺のポスターから撮影させて頂いたんですが、施無畏印を結んでおられる右手の向こう側に、十二神将の手が写っていますね(笑)
左手には万病に効くと言われる薬の入った”薬壺”を載せています。典型的な薬師如来のポーズです。
近年になって、ご本尊仏像の胎内から法華経8巻が発見されました。
そして、その経典も国宝に指定されています。仏像の胎内には、実に様々なものが納められています。歴史の謎を解く鍵を握る場所と言ってもいいのではないでしょうか。
東大寺や安倍文殊院の宗派として知られる華厳宗ですが、華厳宗とは一体どのような宗派なのでしょうか。
以下に、Wikipedia記載の「華厳宗」を引用させて頂きます。
大乗仏典のひとつ『大方広仏華厳経』(『華厳経』)を究極の経典として、その思想を拠り所として独自の教学体系を立てた宗派である。華厳宗の本尊は、歴史上の仏を超えた絶対的な毘盧遮那仏と一体になっている。菩薩の修行の階梯を説いた「十地品」、善財童子の遍歴を描いた「入法界品」などが有名。東大寺の大仏も本経の教主・毘盧舎那仏であり、日本仏教の黎明期に重用されたが、大乗仏教の中でも独特の教学を持つため宗勢は徐々に衰えていった。
華厳宗の本尊は毘盧遮那仏と一体になっている。
気になる箇所ですね。
東大寺の毘盧遮那仏は遍く光を照らす存在です。そして、新薬師寺の薬師如来坐像も、菩薩としての修業中に体から光を出して世界を照らし出すという願い事を立てたことで知られます。
「光」というキーワードで結び付く東大寺と新薬師寺の御本尊。
ふと気付けば、薬師如来坐像の周りをガードする十二神将が、太陽の周りを回る惑星に見えてくるような気が致します。東の方角をイメージさせる薬師如来は、太陽の軌道上に居る仏様と言えなくもありません。
新薬師寺の本堂。
新薬師寺は光明皇后が創建したお寺です。夫である聖武天皇の目の病気が治ることを祈願して建てたと伝えられます。
新薬師寺の「新」には、霊験”あらたかな”という意味が込められています。西の京にある薬師寺とは全くの無関係なんだそうです。ちなみに薬師寺の宗派は法相宗になります。
新薬師寺は萩の名所として知られますが、私が参拝したときには綺麗な桜が咲いていました。次回は9月の萩を見に行こうかなと計画しています。
拝観料は600円。
駐車場は無料で、南門の脇~拝観受付の横にあります。