荒々しい中にも泰然自若の風情を醸す大徳寺瑞峯院の独坐庭(どくざてい)。
拝観料の400円を納めて鑑賞するだけの価値は十分にあります。大徳寺塔頭の瑞峯院には独坐庭の他にも、十字架の石組を持つ閑眠庭、茶室安勝軒、平成待庵などの見所が揃っています。
大徳寺瑞峯院の独坐庭。
茶の湯や名庭で知られる京都を代表する禅刹の大徳寺。言わずと知れた臨済宗大徳寺派の大本山なわけですが、大徳寺の21ある塔頭の中の一つに大友宗麟創建の瑞峯院がひっそりと佇みます。
独坐庭は鑑賞する対象の庭こそが「独坐」の状態を表しています。しかしながら、こういう枯山水庭園を拝観するときは、見る側の私たちも一人の方がいいような気も致します。
蓬莱山式庭園の独坐庭
蓬莱山(ほうらいさん)とは中国古代における伝説上の神山のことで、中国山東地方の東海中にあって仙人が住むと云われます。蓬莱山は古来より、不老不死の地・霊山として仰がれていました。よもぎがしま、蓬莱島、亀山、神島とも呼ばれます。
なんだか夢のような神山ですね。
瑞峯院の門前右手前に、独坐庭と閑眠庭の名が刻まれた石標が立っています。
独坐庭の名前の由来は、中国の禅僧百丈禅師が「独坐大雄峰」と呼唱された禅語に因みます。
北大路通沿いの大徳寺前バス停で下車し、右手に大徳寺納豆の老舗を見ながら北上します。
しばらく歩くと、左手に大徳寺の駐車場と総門が見えて参りました。総門と言う割には、意外と小ぶりな門に驚きます。
朱色に映える大徳寺三門。
総門を入るとすぐ右手に三門が姿を現します。
手前に少し写っているのが、三門の南に位置する勅使門です。入口の総門とは打って変わって、境内の建物はやはり大きいですね。南から順に三門、仏殿、法堂と続いていました。
大徳寺三門(金毛閣)は千利休が自身の木像を安置して秀吉の怒りを被り、切腹を命じられるに至ったいわくつきの門として知られます。
三門を右手に見ながらそのまま進むと、瑞峯院への道案内が出ていました。枯山水拝観も案内されています。
千体地蔵塚、興臨院を経て瑞峯院、大慈院へと続きます。
行く手の右側に瑞峯院の門が見えて参ります。
瑞峯院の小冊子を見ると、その住所が京都市北区紫野大徳寺町81と記されています。
紫野(むらさきの)という地名の響きがいいですよね。織田信長を祀る建勲神社が鎮座する船岡山や大徳寺を中心とする地域を紫野と呼んでいますが、大徳寺の西側にも京都市立紫野高等学校があります。
枯山水や茶室が案内されています。
このまま真っ直ぐ南へ行けば、大慈院と鉄鉢料理のお店「泉仙」が控えています。
少し角度を変えて、縦長に独坐庭を拝観します。
波打っていますね。
瑞峯院方丈の正面に位置する独坐庭。方丈を中心として南北西に三つの庭が作庭されていますが、いずれも重森三玲の作として知られます。
京都で心落ち着く庭を拝観すると、名庭として名高い龍安寺の石庭を思い出します。参拝客が座る縁側と庭の位置取りもよく似ていて頭の中で重なります。
庭の手前に案内板がありました。
以下、瑞峯院の小冊子から抜粋させて頂きます。
寺号、瑞峯をテーマにした蓬莱山式庭園です。
この枯山水は、俄々たる蓬莱山の山岳から半島になり、大海に絶え間なく荒波に、打ち寄せもまれながらも雄々と独坐している、大自然の活動を現しております。
茶席の前の方は入り海となり、静かな風景を現しております。
こちらが蓬莱山でしょうか。
秘境中の秘境を思わせる出で立ちです。仙人が住んでいたと言いますから、仙境と表現する方が妥当かもしれません。
反対側から見てみると、また少し趣が違いますね。
誰も居ない縁側との間に静かな空気が流れています。無言の会話を交わしながら、方丈裏手の閑眠庭へと足を向けます。